コネ入社を異常に敵視する人が知らない真実 自称・女子大生の炎上ツイートから考察する

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ちなみに私は、「青田買い」と呼ばれる学校指定枠で博報堂に入社している。現在は存在しないかもしれないが、1996年から少なくとも2000年代前半にかけて私を含む一橋大学の学生に対してはさまざまな会社からOB訪問先のリストが送られてきていた。「OB訪問」と銘打っているが、実際は「上位校」の学生限定の採用活動である。これも厳密にいえば「先輩方が優秀だった」という過去実績を前提としたコネ入社のようなものだ。

コネ入社も楽じゃない

実際に会社で仕事を開始すると、コネ入社組か一般入社組かという違いはあまり意識をしなくなる。入社時は「誰がコネ入社か」といったことをヒソヒソと同期同士で語り合うことはあるものの、なんだかんだいって研修中に皆仲良くなり、どんな入社のあり方をしたかはほぼ意識しなくなる。

そして普段の仕事中も、「あいつはコネ入社だ」と揶揄することはない。揶揄する場合は、よっぽど無能だったりグータラだったりする場合だろう。しかも、そのときに無能とグータラの根拠として「コネ入社」が便宜上使われるだけ。それ以外の無能・グータラな理由よりはわかりやすい。コネ以外の方法で入社したのであれば、「突然キレる性格」や「とにかく外注先に対して横柄で人望がない」といったところに無能の根拠を見いだすもの。だが哀しいかな、コネ入社は「あいつはコネで入ったから」の一言で周囲が納得してしまう雰囲気がある。前出のコネ入社社員はこの件についてこう嘆息する。

「もう慣れました。自分の苗字は珍しい苗字なので、多くの人が知っている会社の創業者と同じであることからコネで入社したことがバレてしまいました。そのため、ちょっとしたミスでも『コネだから、仕方ないよね』とバカにされます。コネ入社組は、一般入社組よりもより成果を出さなければ認めてもらえないのです」(博報堂勤務の男性社員)

コネ入社ゆえに、入社後の出世に余計なハードルが存在してしまうのだ。そもそも、コネ入社する人間は、優秀な親族をつねに間近で見ていただけに、立居振舞も洗練されているし、それなりの学歴も持っている。コネ枠だってそれこそ数枠しかないだけに、競争はかなり激しい。

私の場合は、「大学枠」をめぐって同じ大学の学生と競争したが、それでも250人受けて3~5の枠を目指す争いである。もしかしたら「コネ枠」は「大学枠」よりも厳しい2000人のアピールからようやく20人入る程度かもしれない。しかも、「サラブレッド」と称されるような人々を相手にするのだから、よっぽど大学枠よりも内定に向けた争いはハードかもしれない。

さて、これから大学生の内定が次々と決まっていくが、同期がコネ入社であることが分かったとしても、社内ではそれを理由に揶揄しないでほしい。なぜならどんな入り方をしたにしても、社内の人間は共に働く「仲間」なのだから。身内同士で足を引っ張りあうことほど無駄で見苦しいことはない。

中川 淳一郎 著述家、コメンテーター

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なかがわ じゅんいちろう / Junichiro Nakagawa

1973年東京都生まれ。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライターや『テレビブロス』編集者などを経て、出版社系ネットニュースサイトの先鞭となった『NEWSポストセブン』の立ち上げから編集者として関わり、並行してPRプランナーとしても活動。2020年8月31日に「セミリタイア」を宣言し、ネットニュース編集およびPRプランニングの第一線から退く。同年11月1日、佐賀県唐津市へ移住。ABEMAのニュースチャンネル『ABEMA Prime』にコメンテーターとして出演中。週刊新潮「この連載はミスリードです」他連載多数。

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