コネ入社を異常に敵視する人が知らない真実 自称・女子大生の炎上ツイートから考察する

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ここで重要なのが「当事者性」である。先に紹介した「俺はコイツが許せない。無内定無職のすべてを使ってコイツを地獄に引きずり回したい」というコメントについては、これを書いた人物の「日本で無内定無職なのでタイで働いてます」というプロフィールを信じれば、「コネを持つ特権階級のせいで自分はこんな状況にいる……」という怨嗟も感じられる。

これを考えると、今回、コネ入社をうたった自称・女子大生を批判した人々はこれから就職をする現役の学生や、人気企業の正社員になれなかった非正規雇用者も含めた社会人の人々だろう。

一方で今回の件については、私の周囲の正規で人気企業に入った人々はあまり気にしていないし、自らの実力で転職も成功させている人々からもまったく怨嗟の声は出ていない。「どうでもいいじゃん」という声だらけだ。

なお、不思議なのがコネ入社で批判が出るのは就職人気ランキングの上位に入るような会社に入った場合。ないしは地元の人気企業に入った場合に限られる。つまり、コネ入社批判は、「いい思いをできる企業に安易に入った人間」へのやっかみであると判断することができる。「(人気企業だから)いい思いをできる」「(コネ入社だから)安易に入った」も、コネ入社を批判する人間の勝手な思い込みに過ぎないが。

理系大学生のコネ入社が叩かれないワケ

一方で、大学の理系研究室から大手メーカーの研究室に毎年学生が入社することについてはそれほど怨嗟の声は出ない。それは東大のようなトップ大学に顕著であり、批判が出ないのは「立派な大学で、しかも真面目に研究した優秀な人材だったら『枠』があっても自然だよね」と思われているからかもしれない。

だが、文系で自分と同レベルかそれ以下の大学の学生がコネを使って人気企業に入ると途端に怒りがこみあげてくる。理系であれば自分の手に届かない範疇だが、文系であれば自分もそのポジションを取れたかもしれないのに……ということなのでは。

私自身は、コネ入社は肯定派である。理由は、コネ入社だからといって格段に能力が落ちる人間を見たことがないからだ。おそらく仕事のできない社員の割合は、コネ社員と非コネ社員との間に有意な差はないだろう。私が新卒で入った会社は広告業界2位の博報堂。「コネ通」と呼ばれる電通ほどではないが、コネ入社した社員はそれなりにいる。コネで入った社員に話を聞くとこう言う。

「正直自分自身、正攻法でこの会社に入れたとは思えません。ですが、コネ枠があることは会社にとって合理的だと思います。なにせ、コネ入社する社員がいることによって一部の取引先と良好な関係を築け、両社にとって仕事が発生するのであれば、会社にとっても有意義です。少なくとも私自身、『会社にお世話になっている』気持ちは強いので、日々仕事をスムーズに進めるよう心掛けています」(博報堂勤務の男性社員)

彼の言うように、「合理的」だからこそ会社にコネ枠が存在するのだ。

次ページ実際に会社で仕事を開始すると…
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