「S660」と「コペン」はその後も売れているのか ホンダとダイハツ、軽オープンの最新動向

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2017年度の販売台数を見て、「両車ともけっこう売れている or あまり売れていない」「販売台数の差が小さい or 大きい」「あれほど話題になったS660がいまではそうなのか」など人それぞれに感想を持ったのではないかと思う。とりわけS660は月販1000台超のペースで推移していた当初の熱狂の印象が強く残っているが、これが現状だ。

両車はオープンで2シーターの軽自動車という点では共通するが、FF(コペン)とミッドシップ(S660)という根本的な違いがあり、クルマのつくりは別物だ。まずルーフの開閉にかかる手間がまったく違う。コペンは軽自動車としては望外なワンタッチで電動開閉が可能なリトラクタブルハードトップが与えられているうえ、トランクもけっこう広い。対するS660はソフトトップを手で着脱しなければならず、それを収めるためのボックス以外にほぼ荷物を積むためのスペースがない。

むろんそのあたりは端から割り切っているのがS660のキャラクターであり、デザインはもとより、低いヒップポイントや背後から聞こえるエンジン音、軽自動車として唯一設定された6速MT、ミッドシップならではのハンドリングなど、S660のほうがはるかにスポーツカーらしい。より“オモチャ”としての魅力が高いのはS660だ。ただし、すでに欲しい人のもとにはだいぶ行きわたった感があり、販売的に頭打ちになっている感は否めない。

コペンも、FFながら俊敏なハンドリングが楽しく、日常的にも使えるだけの実用性を備えており、3通りもの個性がそろえられているのも特筆できるが、独自のアイデアを具現化した前出の「ドレスフォーメーション」について、本来であればもっとサードパーティの参入を見込んでいたであろうところ、正直あまり盛り上がっているようには見受けられない。

MTのイメージの強いS660も実はAT比率が約4割

最初に登場した「ローブ」が約4割、5か月後に加わった「タフ&アグレッシブ」をコンセプトとする「エクスプレイ」が約1割、約1年後に加わった初代コペンに通じる丸目の「セロ」が約5割と最量販で、購入層は50代以上の子離れ男性がボリュームゾーンだが、セロ投入後は若年層や女性の比率が向上し、30代未満の若年層が約3割、女性(全年齢)が約2割に達している。

S660も、30代男性が1割弱で、40代男性が約27%、50代男性が約26%、60代男性が約23%、女性(全年齢)は8%弱と、いずれも年齢層の高めの人が買い求めている比率がかなり高い。

こうしたスポーツカーの場合、MT(マニュアルトランスミッション)を選ぶ人が多いのかと思いきや、コペンのAT比率は約8割にも上っている。これはまだ納得できるとしても、MTのイメージの強いS660も実はAT比率が約4割に達しているのは意外だ。

そんな2台が現時点では大差のない販売台数に落ち着き、月によっては順位が入れ替わっているというのが興味深く、いずれにしてもこういうクルマの市場規模というのは、これぐらいが関の山なのかなと思う。

決して数は多くはないとはいえ一定の販売台数を維持しているのは、それだけ興味を持つ人がいるからにほかならない。願わくは両メーカーには、せっかくこうした世界的にも貴重なクルマを、簡単に終わらせることなく、できるだけ長く続けてくれるよう、いちクルマ好きとして切に願う次第である。

岡本 幸一郎 モータージャーナリスト

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おかもと こういちろう / Koichiro Okamoto

1968年、富山県生まれ。大学卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の編集記者を経て、フリーランスのモータージャーナリストとして独立。軽自動車から高級輸入車まで、国内外のカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでも25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに有益な情報を発信することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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