通常は学生が企業に応募し、選考を経て内定を得るが、逆求人型とは、企業のほうが学生にアプローチし、採用・就職にこぎ着ける形だ。
学生はまず、逆求人型の就職情報サービスに登録し、そこにプロフィールを記載する。それを企業の人事担当者が検索し、「自社に合う人材」と判断すれば、メールで「オファー」を出し、学生側が応じれば、直接交渉をして選考を進めていく、というスタイル。就活生から見れば、今までノーマークだった企業から声がかかる、”思わぬ企業との出会い”がある。
採用紹介などダイレクトリクルーティングの一形態であり、アイデム社が提供する「JOBRASS新卒」などが大手のひとつとして知られている。最近、学生や大学キャリアセンターの間で評判になっているのが、大阪のベンチャー企業であるi-plug(アイプラグ)が運営する、「OfferBox」というサイトだ。
2012年にサービスを開始、2016年卒は1万5000人程度だったが、学生の間でも「反応がある」と、クチコミ的に広まっている。
今年(2019年卒)の登録者数は、5月現在で9万1000人にまで達した。このペースで行けば、今年は登録者数が10万人に達する見通しだ。民間企業への就職希望者は約45万人弱であることを考えると、およそ4人に1人の学生がこのサイトに登録している計算になる。「来年は15万人程度まで増えるのではないか」と、同社の中野智哉社長は勢いを実感している。
これまで首都圏や近畿圏など都市部の学生の登録が多かったが、ここにきて国立を中心に地方学生の登録が増加してきている。地方の学生は都市部の学生と違い、そう簡単に会社説明会や合同企業説明会には行くことができず、会社を発見する機会がどうしても少なくなってしまう。そのため、地の利のハンデを克服できる、逆求人型サイトに期待する動きは強い。
また、「国立大学の理系院生からの支持が高まっている」(i-plug)のも傾向で、就活よりも研究に専念しなければならない彼らにとっては、効率的に活動できるという点でも評価されている。
学生の間でクチコミ的に広まる
「学生がしっかりとプロフィール文章を書き込めば、そのうち9割はオファーが来る」(中野社長)という。企業側も学生がどんなことに取り組んできたか、細かく書かれた情報があったほうが声をかけやすいからだ。
一斉送信メールのようなありきたりの文面だと、多くの就活メールの中で埋もれてしまう。これに対し「ちゃんと就活生のプロフィールを見ている」という姿勢が就活生に響くという。また1社が学生に送れるメールの数を、「採用計画1人に対し40人まで」などと制限し、一斉メールで大量送信することを防いでいる。
登録学生の増加に歩調を合わせるように、登録企業数も伸びている。毎年1000社以上のハイペースで増加し、5月半ばの時点では約3700社に達した。かつてはベンチャー企業が中心だったが、ここに来て、大手企業や理系学生を求めるBtoB企業にも、利用が広がってきているという。
また、これまで1社2~3人といった数人の採用を前提にしていたが、50人規模の採用をOfferBox経由で行う企業も出ている。マイナビやリクナビといった大手の就職情報サイトを使って採用の広報をし、数千人、数万人単位でエントリーを募る「母集団積み上げ方式」よりも、欲しい人材に的を絞って効率的にリクルーティングができるからだ。価格でも別オプションがあるが、通常利用なら、内々定が決定した時点で、企業に対し1人分30万円という設定。現状、1人採用するのにおおむね70万円程度はかかるといわれており、価格競争力も高い。
「転職市場のように、逆求人型のサービスは、間違いなく日本の新卒就活に定着していく」と、中野社長は手応えを感じる。その一方、同時に「その際はもっといいサービスを展開する競合が出現するかもしれない」と、ライバルが増えていくことを予測する。
「最初は知らない会社に入社したとしても、学生が満足できる結果をつくりたい。今後は入社後調査なども実施して、マッチングの質を改善していく」と中野社長。超売り手市場の中で、逆求人型という新たな形態は、就活のあり方を根本から変える可能性を秘めている。
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