伊豆大島台風被害、一気に襲う土石流の怖さ 万全の溶岩流対策の一方、抜け落ちていた土石流対策
「見当もつかないよ。こんなに日の当たるところなんてなかったんだから」--むき出しの山肌を前に、下田昭彦さん(69)は悲鳴に近い声を張り上げた。
台風26号による土石流の直撃を受けた伊豆大島の三原山。下田さんはその中腹に1000坪ほどの山林を所有していた。ふもとの元町1丁目でペンションを営みながら、土地のある元町神達(かんだち)に足しげく通い、代々引き継いだ山を守ってきたのだ。
「テレビでは神達という地区が分かれているように報道されているけれど、そうじゃない。神達は集落としてまとまっているというより、あくまで元町の山側の一部。林の中を林道がジグザグに通り、民家や別荘が点在している場所だった」
まだ行方不明者が多数
しかし、下田さんの見慣れた神達は、もうそこにない。悪夢のような朝から丸2日たった10月18日午前、下田さんは初めて自分の土地を確認しに山を登り、現実を直視した。「かすかに道路が残っているけれど、これがあの登山道か。あんな家がここにあったかな・・・・・・」。記憶の地図はずたずたに引き裂かれてしまっていた。
「あの喫茶店をやっていた知り合いが、行方不明なんですよ」。土砂と流木にまみれてひっくり返った薄ピンク色の建物を指さして、下田さんは声を落とした。
なぜこうなってしまったのか。多くの島民が、茫然自失と自問自答の中にいる。
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