伊豆大島台風被害、一気に襲う土石流の怖さ 万全の溶岩流対策の一方、抜け落ちていた土石流対策

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土石流があらゆるものを押し流した元町3丁目地区で、茫然として歩く被災者

ただし、徹底的に防災対策を施した溶岩流は、人の命を奪うようなものではない。

「実際は溶岩流で人が死ぬことはない」と断言するのは、名古屋大学環境学研究科地震火山研究センターの山岡耕春教授。1986年の噴火後、大島に5年間住み込んで三原山を研究した火山の専門家だ。

「溶岩流のスピードはどんなに速くても人が走って逃げられるほど。火砕流はもっと速いがそもそも噴火自体を予想できる。1986年の噴火でも、誰も死ななかった。それが事実だ」

これに対して、人々の命を奪うのが今回のような土石流だ。

土石流は予測の難しい形で発生し、時速20-40㌔で襲いかかる。今回の被災者も「一気に水と土砂が来た」「気づいたときは逃げ場がなかった」と、そのスピード感を証言する。

溶岩流より恐ろしい土石流

山岡教授は「水の流れの方がはるかに速かった。溶岩流の上を火山灰が滑り落ちたというメカニズムかどうかはさらに詳しく調べないと分からないが、大島の中でも急傾斜なあの場所にあれだけの大雨が降れば崩れるのは仕方なかったろう。今回の教訓からハザードマップや警報基準、避難の手順などを根本的に見直さなくては」と話す。

「災害といえばまず火山対策が頭にあった」

島民の誰に聞いてもこの言葉が返ってくる。しかし本当に備えるべき、命の脅威に対して今回の災害はあまりにも大きな「死角」を浮き彫りにした。

「どこで何が起こるか分からない。あすはわが身だと、日本中の人に思ってもらいたい」。島民の1人は、涙をこらえながらそう訴えた。

関口 威人 ジャーナリスト

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せきぐち たけと / Taketo Sekiguchi

中日新聞記者を経て2008年からフリー。名古屋を拠点に地方の目線で環境、防災、科学技術などの諸問題を追い掛けるジャーナリスト。1973年横浜市生まれ、早稲田大学大学院理工学研究科修了。

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