ゼネコン各社が「AIロボ」導入に超真剣なワケ 人手不足に備えて作業現場の自動化を推進

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全国で稼働するこれら8000台を統合管理するのもロボットだ。今秋には大阪市内での高層ビルで稼働させる予定。

熊谷組<1861.T>は今年4月、山岳トンネルの完全自動工法を開発した。大深度での高水圧など難しい地盤条件でも対応でき、熟練工不足と災害の防止を克服し、生産性を実現できると説明している。

建設ロボット、普及に壁

ただ、高度な建設ロボットの開発と普及のテンポが問題となっている。立命館大学ロボティクス学科の川村貞夫教授は「既存の整備された環境を前提とした産業ロボットでは対応できない現場に適応したのが(建設現場での)フィールドロボット」と説明。

正確な位置認識と移動、アームでの細かな作業も伴う高度な技術が、求められる高度な技術を集積していると話す。

しかし、新技術を導入には「コスト面などから施主の承諾が得にくく、現場での実証と技術発展がなかなか進まない」と指摘。足元での大幅な生産性向上に結びつかないと分析している。

清水建設の常務執行役員の印藤正裕・生産技術本部長は、現在開発中の自律型統合ロボット導入で、各工程では約8割程度の省人化が実現できるとしながらも、建設工事全体の膨大な工程からみれば、省人化効果は1.1%程度と見ており、10%の生産性改善という目標は、そう簡単ではないとみている。

他方、日本総研理事の山田英司氏は、生産性改善が進まない背景について、2020年の東京五輪までは工期の厳しさなどから、作業現場に大規模な作業員投入を迫られ、逆に労働時間の増加が発生していると指摘。

五輪後は、ロボット施行を容認する施工主の余裕も出てきて、20─25年度には10─15%の生産性上昇が実現できるのではないかと、中期的な生産性改善に期待を寄せている。

(中川 泉 編集:田巻一彦)

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