ピンチ!がん治療の危機を招く「病理医」不足 病気の発見・診断・治療が遅れるリスクを生む
今、日本のがん治療が危機的な状況を迎えようとしている。
日本人の死因で最も多いがんの治療には、外科医だけでなく、病気の診断を専門とする病理医の存在も欠かせない。だが、その数が圧倒的に不足しているのだ。
このまま病理医が増えないと、日本の医療の根幹が揺らいでしまう。
最も不足している「もうひとりの主治医」
昨年、女優の芦田愛菜さんが将来の夢に病理医を挙げて話題をさらったことで、病理医の存在を初めて知った方も多いのではないだろうか。
病理医は、検査で採取された細胞や組織の一部である「病理検体」を顕微鏡で観察して、病気を診断する専門医である。病理医がいる検査室には、頭のてっぺんから足の先まであらゆる細胞や組織が届けられる。
病理診断は病気を確定する最終診断となり、病理診断がないと治療は始まらない。それはがんも同様である。
病理医は、がんの手術で切除された臓器を観察し、ステージを確認する。腫瘍が取り切れているのかどうか、がんがどの程度進行しているのか。こうした視点でも病気の広がりを診断する。手術の方針を決めるための診断も行う。
このように病理医は、患者に直接会うことのめったにない医師であるが、誰よりもその患者の病気を熟知している「姿の見えないもうひとりの主治医」といえる。
だが、病理医は非常に不足しているといわれる。
一般的に病理医を必要とするのは、病床数20床以上の入院施設(病棟)を持つ「病院」だ。厚生労働省の医療施設調査・病院報告(2016年)によると、病院数は8442。これに対し、病理医数は2405人(日本病理学会調査、2017年10月現在)となり、その差は6037にも上る。
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