人と寝具の意外と知られていない長く深い縁 蘊蓄100章で綴るその役割と歴史

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81. 「枕」の原型は古代エジプトの墳墓からも発見され、国の東西を問わずほとんどの地域で用いられている

82. しかし古代においては丸太や平たい石をそのまま使用したり、藁や真菰、スゲなどの茎を束ねて利用した

83. その後、中国で丹念な装飾を施した布製や陶磁器製の枕がブームとなり、中世ヨーロッパでも珍重された

84. 産業革命以降は安価に大量生産された布を使ってさまざまな枕が生産されるようになり、現在の形に至る

85. 江戸時代までの日本では髷(まげ)の形を崩さないよう、箱の上に布製の「括り枕」をつけ高さを上げた

86. これは「安土枕」とも呼ばれるが、男性用と女性用で形状が異なり、箱には引き出しが付いていた

87. この引き出しはお金や貴重品を入れる金庫の役目も果たしており、火事の際は枕を抱えて逃げたという

88. 当時、盗人のことを「枕探し」と呼んだのも、枕の引き出しに貴重品が入っていたことに由来している

89. なかには引き出しに春画を入れている者も多く、それが春画=「枕絵」と呼ばれる所以にもなっている

タオルケットは日本生まれ

90. 夏の代表的な寝具といえば「タオルケット」だが、これは実は〈日本生まれ〉の製品である

タオルケット(写真:Rina / PIXTA)

91. もともとタオル用に生産していたパイル織機の巾を広くし、寝具用として改良し作られたもの

92. タオルケットが現在のようなスタイルになったのは昭和30年代後半からである

93. タオルケットという呼び名は、タオルとブランケット(=毛布)という言葉を組み合わせた造語である

94. 実は「布団」という文字は後世の当て字であり、本来は「蒲団」と表記するのが正しい

95. 蒲団は禅僧が座禅に使用する蒲を材料とした円形の敷物に由来し、「団」は〈丸い〉という意味を持つ

96. 現在では蒲のように硬いものではなく、軟らかい素材を用いるようになったため〈布団〉と書くのが一般的だ

97. ヒトが寝床を定めるようになって以降、寝具に現れるダニやノミといった害虫との闘いも続いている

98. これを防ぐためには寝具を定期的に天日干ししたり、風を通して清潔に保つ必要がある

99. 近年、優秀な布団乾燥機なども登場しているが、太陽光線中の紫外線による殺菌効果にはなかなか及ばない

100. 羽毛布団は天日干しに向かないため陰干しが必要だが、布団を干す時間は30分~2時間程度が目安である。

(文:寺田 薫/モノ・マガジン2018年6月2日号より転載)

参考文献・HP/「ベッドの本」(海鳥社)「寝所と寝具」(雄山閣)、ナショナルジオグラフィック、イワタ、西川産業、日本ベッド、フランスベッド、貞苅産業ほか関連HP
モノ・マガジン編集部

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『モノ・マガジン』はワールドフォトプレス社が発行するモノ情報誌。原則、隔週で発行している。公式サイトhttp://www.monomagazine.com/

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