話がわかりにくい人は説明の作法を知らない まずは興味を引かせ、階段を昇ってもらおう
「ジャンボジェットが空を飛んでるしくみって、いまだに判明していないの知ってた?」
予備校に勤務していたときに、友人の物理講師から話しかけられたときのことです。
私はすかさず「それって、どういうこと?」と、彼の話に食いついてしまったのです。
彼は「そもそも揚力というものがあってね……、そして航空力学の観点でいうとね……」と続けました。物理学にさほど興味のなかった私なのに、彼の話にすっかり聴き入ってしまいました。その彼の説明は、内容そのものも面白かったのですが、何よりも説明の仕方が秀逸だったのです。
まず、興味の湧くフレーズから入って、そのあとに前提を話し、欠けているエビデンスは何なのかを明らかにする――彼の知的でわかりやすい説明には、ある種の“型”のようなものがあることに気づきました。
私はその日の講義で、彼がやっていた説明の“型”と思われるものをさっそく使ってみたのです。私の担当科目は化学なので、物理学を用いた飛行機ネタは使えませんでしたが、開口一番、次のようなフレーズで話してみました。
「よく知られてる○○ってあるけど、あれって実際は××だって知ってた?」
講義を始めた途端、生徒は身を乗り出して話を聴いてくれたのです。内容として小難しい化学の話に生徒がグイグイ食いついてきてくれるようになったのです。こうやって、毎日の講義でのトライ&エラーによって、必殺技ともいうべき知的でわかりやすい説明の“型”を見つけたのです。
説明の黄金フォーマット「IKPOLET法」とは?
教育現場では、倫理的な観点や測定方法の困難さからも、実験的な学習の効果測定があまり行えないのが現状です。
ですので、「実際にやってみたら、うまくいった」──この集積がとても大切だと私は考えています。そこに、教育心理学や教師教育学などの“ロジック”を紐づけていくことで、より確実なものにしていくのです。
拙著『東大院生が開発! 頭のいい説明は型で決まる』で具体例を交えて詳しく説明していますが、まさにそんな実践と理論の融合で生まれた説明の“型”が、IKPOLET(イクポレット)法というものです。
IKPOLET法は、具体的には次の7 つのステップでデザインされた説明用フォーマットです。「IKPOLET」とは、各ステップのアルファベットの頭文字をつなげたものです。
Step2 聴き手のもっている知識や認識にアクセスする(Knowledge)
Step3 目的を示す(Purpose)
Step4 大枠を見せる(Outline)
Step5 つなげる(Link)
Step6 具体化、事例、証拠を示す(Embodiment,Example,Evidence)
Step7 転移(Transfer)
なお、念のためお伝えしておきますが、これらのステップをすべて踏む必要はありません。各ステップの順序が大幅に入れ替わらないかぎりは、その細かい順序もあまり気にしないでください。状況によってはその手順を飛ばしたり、入れ替えたりしたほうがいいこともあります。
私がいちばんお伝えしたいのは、相手にしっかりわかってもらうための説明には“型(フォーマット)”が存在するということです。
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