デキる人は「寝る・風呂・歩く」を怠っていない あの「イエスタデイ」は夢から生まれた

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とはいえ、クリエイティブ思考を活性化するために必ずシャワーを浴びなければならないわけではない。自分だけのシャワーヘッド……つまり、心を自由にさまよわせることができる空間を見つければいいのだ。海辺の歩道でもいいし、郊外へのドライブでもいいし、自宅の奥まった読書スペースでもいい。

電気技師で発明家のニコラ・テスラは、数々のすばらしいアイデアを生み出したが、最善のアイデアの一つが生まれた場所は、研究室ではなかった。彼が交流電流という概念を思いついたのは、のんびりと散歩していたときだったのだ。

ウォーキングは移動式瞑想

歩いていて偉大なアイデアを思いついたテスラの物語は特別なものではない。イマヌエル・カントは、住んでいたドイツ・ケーニヒスベルクの街を毎日1時間かけて散歩するのが日課だった。

カントはきわめて律儀にこの習慣を守った。毎日、午後の決まった時間に決まった場所を通過したので、街の人はカントが家の前を通りすぎるのに合わせて時計の針を直したそうだ。記録によれば、カントが散歩しなかったのは一度だけで、それはジャン=ジャック・ルソーの『エミール』に夢中になり、読み終えるまでの数日間、家に閉じこもっていたときだけだった。

カントはひとりで「哲学の道」(彼にちなんで名付けられた)を散歩するのが好きだった。ひとりなら、会話せずにすんだからだ。体が弱かったカントは口をあけずに鼻呼吸した。そのほうが、哲学の探究といったテーマについて、考えを巡らせやすかった。

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チャールズ・ダーウィンも、毎日の散歩を大切にしていたことで知られる。お供にポリーという名の白いフォックステリアを連れて、ケント州ダウン村の「思考の小道」と自ら名付けた道を歩いた。この散歩は単に運動のためではなく、内省したり、クリエイティブ思考を孵化させたりするためでもあった。

オーストラリアの哲学者デイモン・ヤングによると、それはいわば「移動式瞑想」で、ダーウィンは散歩することで深い思考とクリエイティブ思考を刺激したのだ。

自然の中を歩くと脳に生理学的変化が起きて、いらだちとストレスが減り、心が研ぎ澄まされ、高次の瞑想が可能となり、気分も良くなる。その結果、クリエイティブ思考とより強くつながることができるのだ。

スコット・バリー・カウフマン 心理学者

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Scott Barry Kaufman

知性と創造性を専門とする心理学者。ニューヨーク大学の非常勤准教授、ペンシルベニア大学ポジティブ心理学センター内、イマジネーション研究所の科学ディレクター。知性を再定義する試みがメディアの注目を集めている。アメリカ心理学会Daniel E. Berlyne賞、メンサ・インターナショナル賞を受賞。ビジネスや技術関連のニュースウェブサイト「ビジネスインサイダー」において「世界を見る目を変える傑出した科学者50人」に選ばれた。フィラデルフィア在住。

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