40歳非常勤講師、「夫婦とも雇い止め」の深刻

学校側の行為は「無期転換逃れ」の疑いがある

また、ヒロキさんの妻のケースは一見、無期転換逃れとは無縁に見えるが、そうとは言い切れない。彼女は上司から雇い止めを通告されたとき、契約終了から6カ月が過ぎれば再雇用が可能だとも言われたという。さらに「その場合は6カ月後に“たまたま”“偶然”もう一度働きたくなったという体裁を取ってほしい」との旨を念押しされたというのだ。

改正労働契約法18条は、契約終了後に6カ月以上の期間が空いた後に再雇用された場合は、勤続5年の通算はリセットされるとしている。しかし、このクーリング制度を無期転換逃れのために悪用することは法律の趣旨に反する。彼女の話が事実なら、こちらも脱法行為の可能性が高い。

社会にとって初めての試みの「無期転換ルール」

改正労働契約法18条が制定された背景には、2008年のリーマンショックが引き起こした「派遣切り」がある。非正規労働者の大量雇い止めという深刻な事態を受けてつくられた法律が求めているのは、非正規労働者の雇用の安定であり、無期転換させないために雇い止めをすることではない。ヒロキさん夫婦が、この法律ができたばかりに仕事を失い、貧困へと陥るのだとしたら、本末転倒も甚だしい。

無期転換ルールは社会にとって初めての試みだ。何が違法なのかといった線引きは現時点では不透明な面もあるとされる。抜け道のある法律にも問題はあるが、働き手自身が制度の仕組みを理解し、無期転換逃れはおかしいと声を上げ、権利を行使しなければ、このルールは画餅に帰すだろう。

ヒロキさんによると、職場で同じように雇い止めに遭った非常勤講師は自分を含めて4人。しかし、この短大が主な勤め先ではないなどの理由で、首都圏大学非常勤講師組合に入って雇い止め撤回を求めたのは結局彼だけだった。

ヒロキさんはまだ幼い子どもへの思いをこう語る。

「大学くらいは希望どおりに行かせてあげたい。フランス語も教えてあげたい。でも、僕の両親がしてくれたような大学院も、留学もという教育は、子どもには受けさせてあげられないと思います」。

愛情と期待と罪悪感と――。複雑な感情を背負いながら、「いまできることをしたい。大学とは最後まで闘いたい」という。

本連載「ボクらは『貧困強制社会』を生きている」では生活苦でお悩みの男性の方からの情報・相談をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。
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