実際には、しゃべりまくっているのは和代さんのほうらしい。仕事の苦労話などを「喉が痛くなるまで」話し、喜怒哀楽を正人さんにぶつけさせてもらう。最後には彼に「まあまあ」となだめてもらうのが定番だ。
「正人さんから守ってもらっていると感じています。いつも迷惑をかけているんです」
「迷惑とは思っていないよ」
筆者の前でのろけ始める2人。和代さんには1つだけ不安要素がある。将来、年上の正人さんが先に他界してしまうことだ。
「私を一人にしないでね、と言っています。私のほうが彼よりも先に死にたいです」
「お互いにそう思っていれば、元気に長生きできるんじゃないかな」
わずか1年前まで赤の他人だったのに…
もともとスポーツマンの正人さんだが、和代さんの不安を和らげるためにプールにも通っている。和代さんは得意ではない料理に励み、正人さんの健康に気遣っている。
晩婚さんは、結婚したときには病気や死を身近に感じる年齢になっている。相手にずっと健やかでいてほしいと切実に願う一方で、自分も元気で長生きすることで相手を看取ってあげたくなる。最後の日を想像するとせつなくなるけれど、その日まで楽しく支え合って生きることを幸せと呼ぶのではないだろうか。
「正人さんは私にとって最強の味方です」
「和代さんはなくてはならない女性です」
照れることなくまじめな表情で語る2人。わずか1年前までは赤の他人だったのだ。それが今ではお互いがかけがえない家族となっている。人と人のつながりは不思議で強くて温かい。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら