そんな正人さんに転機が訪れる。50歳になった、という事実だ。
「周囲に何か言われたわけではありません。50歳という言葉の重みをズシンと感じてしまいました。自分がまさか50になるとは、ウソでしょ!という気持ちです。そして、このまま結婚を経験せずに1人きりで人生を終えていいのだろうか、友達ではなくパートナーが欲しい、と思うになりました」
50歳にして初めて年齢の重みを感じる――。ちょっとバカっぽい告白だが、共感する男性も多いのではないだろうか。人生100年と言われる時代、折り返し地点である50歳で初めて「自分の家族が欲しくなる」人もいるのだ。
婚活をしようと決めた正人さんはネットであれこれ調べ始めた。東京世話焼きおばさんの縁結びに行き着いたのは、なんと本連載の記事がきっかけだという。晩婚さんへの興味で続けている連載が、新たな晩婚さんを生み出すことに役立っているのだとしたらうれしい。
「お見合いした6人目が和代さんでした。初回からすごく楽しくて、気がついたら1時間半も経っていたんです。すぐに気持ちが決まり、(成婚)休会をすることに決めました」
「人間嫌い」の過去を持つ和代さん
興奮ぎみに語る正人さん。その隣でほほ笑んでいる和代さんにも話を聞きたい。彼女は20代が終わるまでは男性どころか人間が好きでなかったと言い切る。
「やや複雑な家庭で育ったからでしょうか。子どもの頃は友達を作れませんでした。女子グループみたいなのが苦手だったんです」
母子家庭で育った和代さん。唯一のおしゃべり相手は母親だった。母と離れたら、誰ともまったく話さなくなってしまう。そんな予感がして一人暮らしもできなかったという。
和代さんにとっての転機は、30代になってから仕事をしながら大学に通ったことだ。議論を交わすことが求められる環境で気の合う仲間ができて、性格が明るくなったと和代さんは感じている。いろいろな人と話すことが楽しくなり、短期間ながらも男性との交際もあった。
ところが、40歳のときに再び状況は暗転する。最愛の母親が他界してしまったのだ。母親は長く癌を患っていて、最終的には2時間おきに和代さんと妹夫婦が交代で看護をしていた。その日、和代さんは疲れており、携帯電話のタイマーをかけるのも忘れて寝入っていた。起きたときには母親は亡くなっていた。
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