指導者だけでなく、親の過熱ぶりも目立ちます。女子野球の試合も、かつてののどかな応援風景から一変しています。最近の親の中には、男の子と同様、野球で高校、大学、社会人、プロを目指させるために”鍛えてやってください”という人も増えました。
ネット裏からのわが子への指図や叱責、審判、相手チームへのヤジも見受けられます。『フェアプレー、リスペクト』を野球に根付かせるためには子どもより大人が先に変わらなければならないのではと感じています。
男子の野球を反面教師にして、せっかく”野球好き”マインドを膨らませながらここまでやってきたのに、男子と同じになっては意味がないと思います」
残念な話だが、女子野球の現場では、パワハラやセクハラと受け取られかねない事例も出てきた。ある女子野球指導者は、実業団チームオーナーの経営者から「君たちのユニフォームを作るのは、キャバクラでカネを使うのと同じなんだ」と言われて席を立ったと話す。
重要なのはプレイヤー・ファーストの姿勢
日本社会は今、セクハラ騒動に揺れているが、男社会の最たるものだった「野球界」の古い因習がせっかく育ち始めた女子野球を侵襲しつつあるのも事実なのだ。
石田はスポーツの発展、指導者に必要なものは何かを学ぶために日体協(現日本スポーツ協会)公認スポーツ指導者コーチ資格を得、今年の3月に筑波大学大学院でスポーツ健康システム・マネジメントを学び修士号を取得、4月からは筑波大学大学院野球コーチング論研究室に在籍している。
選手の健全育成のための至適な指導者やアントラージュ(環境)のありかたを探り、女子野球の組織構造の中でどのように機能させることがよいのかを研究している。
「今までの男子の野球は技術指導に偏りがちでしたが、スポーツ指導者にはそれに加えて医科学の知識や、安全管理をはじめとした他分野のマネジメントも重要です。そして何より選手の個別性を尊重したプレイヤーズファーストの考えに基づいたインテグリティ(誠実さ、高潔さ)が、女子野球には求められると考えています。」
3月3日の「女子野球シニア交流大会」では、現役の履正社高校女子野球部員がシニア選手たちの試合を見守り、ボールガールを務めた。
監督の橘田恵が打席に立つと、彼女たちは楽しそうに応援ソングを歌った。
「うちの部員たちに、この試合を見せたかったんです。大先輩の皆さんがこんなに楽しそうに野球をしている。先輩方が頑張ってくれたから、いま私達が野球がこのようにできるんだと思う。彼女たちもさまざまな方面で野球とかかわってほしいし、この先もずっと野球が大好きでいてほしいと思います」
(文中敬称略)
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