何事もそうですが、できない理由を挙げれば切りがありません。できない理由を探すのではなく、できるための方法を探してほしいと思います。つまり工夫が大事です。たとえば次のような工夫です。
読み聞かせの時刻にアラームをセットする。タスクリストに読み聞かせを入れておく。子どもの枕の上に本を乗せておく。図書館で30冊くらい借りてきて、1冊ごとに何月何日に読み聞かせをするか書いた付箋を貼り付けておく。自作の模擬時計に読み聞かせの時刻を書いて本物の時計の横に貼る。夕食のときなどに、事前に「今日は○○という本を読むよ」と宣言しておく。はるみさんのように、子どもから催促するようにしてもらう。
いつも子どもに「宿題を忘れないで」とか「明日の支度を忘れないで」などと言っているのですから、親も忘れない工夫をしてほしいと思います。
これは私の考えですが、これほど価値のあることを、かわいいわが子にしてあげられないほど忙しいというのは、そもそも日本人の働き方そのものに問題があるのかもしれません。日本人全員の働き方改革が必要ではないかと思えてならないのです。
とはいえ、社会が変わるのを待っているうちに子どもは大きくなってしまいますので、自分自身にできることを考えてみましょう。容易なことでないのは重々承知ですが、「自分はいったい何のために働いているのか? 誰のために働いているのか? 今、自分にとって何が大事なのか?」と、大局的な観点から問うてみることも必要かもしれません。
小学校4年生からでも十分間に合う
ところで、講演のときによく聞かれる質問が「読み聞かせは何年生までできますか?」というものです。これに決まりはありません。もちろん、子どもが嫌がるのを無理やりに行うのはやめたほうがいいです。ますます本が嫌いになってしまうからです。でも、子どもが嫌がらなければ、何年生でも大丈夫です。実際に、小学4年生から親が読み聞かせを始めて、本が好きになったという子もいます。
私が小学校の教師だったときは、5、6年生の子どもたちにも読み聞かせを行いました。私の場合、5、6年生を受け持ったときは、絵本より長編物語が多かったです。「ああ無情」は必ず読み聞かせました。
「ああ無情」は、犯罪者として生きていたジャン・バルジャンが、ミリエル司教の愛によって感化され改心していく物語です。ジャン・バルジャンの魂が浄化されていく過程は、思春期前期の子どもたちの心に深くしみ込んでいきます。
この物語を毎日少しずつ読み聞かせながら子どもたちの表情や反応を見ていると、それがよくわかります。特に印象深い場面は、改心したジャン・バルジャンの真の姿を知った刑事ジャベールが、自分を恥じて入水する場面です。
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