コメの価格が3年で3割も上昇した根本理由 なぜ主食用のコメが値上がりしているのか

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他の穀物に転作する方法だってある。小麦に転作すれば、10アール当たり4万3000円の所得が得られ、主食用米より労働時間は少なく所得は多くなる。小麦だと転作助成金(畑作物の直接支払交付金を含む)を飼料用米より少なく抑えられる。

たまねぎやキャベツを生産すれば所得はもっと増える(写真:ニングル / PIXTA)

さらには、同じ10アールの土地があるなら、水田を畑地化して、たまねぎやキャベツを作れば、所得は飼料用米を作るよりももっと増える。しかも国から補助金をもらわずに、だ。

確かに労働時間はコメを作るより多くなるが、機械化してたまねぎやキャベツを作れば、コメを作る時間とほぼ同じで済む。補助金に頼らず、コメを作るときと同じ労働時間で、コメを作るのよりも圧倒的に多くの所得が得られる方法はあるのだ。

適地適作で、水田を水田のまま残すな

最近のコメの値上がりは、こうした飼料用米への過剰な転作誘導が手厚い補助金によって行われていることが、原因としてある。それを改めるにはこの手厚い補助金の配分を抜本的に改めることだ。行政による生産数量目標の配分は廃止されたものの、減反政策の残滓である「転作助成金」のひずみという問題は、依然として残っている。

確かに、これまで減反の象徴だった「行政による生産数量目標の配分」を廃止するところに持っていくまででも、政治的な困難があり、前掲のように、コメの生産量を将来にわたって維持する計画を示しつつ、ようやく2018年度にその廃止にたどり着いた。

ただ、もう廃止されたのだから、いつまでもコメの生産にこだわる必要はない。助成金を使った飼料用米への過剰な転作誘導をやめつつ、需要減が不可避な主食用米の効果的な転作を進めていくべきだ。適地適作を見極めながら、水田を水田のまま残すことにこだわらず、今こそ生産性の高い農業を目指すときである。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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