減反政策の本質は、コメの生産量をいかに減らすか。だから、減反政策は、米の生産数量目標を農家に国が配分し、その目標に従わせることで生産量を抑制する方策と、米農家に転作助成金を支給する方策という、2本立てである。
前者についてはコメの作付面積を政府が配分していた時期もあったが、要するに、政府が農家ごとに目標量を決め、それを超えないように生産することを各農家に求めた。後者はコメ以外の作物に転作した農家に対して国が補助金を出すというものである。
減反政策は生産数量目標をいかに達成するかがカギなので、生産調整に応じてコメを作らなかった農家に補助金を出すだけでなく、生産数量目標を達成できなければ、転作助成金をはじめもろもろの補助金は出さない、という罰まであった。
そこに、2009~2012年の民主党政権による、戸別所得補償制度の導入が加わった。これとあわせて2010年から、生産数量目標を達成できなかった農家にも、主食用米以外の飼料用米などへの「転作助成金」を支給することにした。これがやがて冒頭のコメの値上がりと関係してくる。こうして、生産数量目標を達成しようがしまいが、国から補助金がもらえる状況になった。
2012年に自民党政権へと代わり、第2次安倍晋三内閣は戸別所得補償制度を廃止。といっても、農家への補助金を全廃するわけにもいかないので、民主党政権期の補助金をどう見直すかが焦点となった。その際、行政による生産数量目標の配分を2018年度以降、撤廃することを決めた。この「行政による生産数量目標の配分」の撤廃を、減反廃止と評する向きもあるが、実質的には廃止とは言えない。なぜなら前述のとおり、減反政策は、生産数量目標の配分だけではなく、転作助成金もあるからである。
安倍政権が2013年に決めた見直しで、行政による生産数量目標の配分を廃止するのに合わせて主食用米への補助金はなくすことにしたが、転作助成金を残すこととした。しかも、転作助成金は、民主党政権期に生産数量目標に関係なく補助金を出すことにしたのを踏襲している。
農家が「経営判断」で生産調整
行政による生産数量目標の配分はなくなったが、農業者の経営判断による生産調整は残る。生産調整は必要と認識する当事者も多いため、農林水産省が2015年に策定した「食料・農業・農村基本計画」では、食料自給率を維持すべく生産努力目標を主要品目ごとに示した。
同計画で示されたコメの生産努力目標は、2013年度の872万トンから2025年度に872万トンとした。要するに2025年度でも2013年度と同じ生産量を維持することを努力目標として掲げたのだ。中でも飼料用米は、2013年度の11万トンから2025年に110万トンに増やすことを、努力目標としたのである。
これが飼料用米への手厚い補助金の裏付けとなっている。全体のコメの生産量を維持しつつ、飼料用米の生産量を増やすということは、主食用米の生産量を減らして飼料用米を増やすことにほかならない。そうした計画になっているのである。
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