27歳、発達障害で性依存に陥った彼女の真実 「当事者が悩みについて話せる場を作りたい」

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「清潔感にまで手が回らなかったんです。あと、シャンプーも苦痛で3日に1度くらいしかしていませんでした。親は気づいたときに、シャツのたるみを直してくれたり、髪の毛をきれいにとかしてくれたりと、フォローしてくれていましたが、逆に親がやってくれるから自分でやらなかったのだと思います」(莉奈さん)

現在の姿は特別不潔さを感じないが、それは高校の頃、水商売のきらびやかな女性モデルたちが掲載されている雑誌『小悪魔ageha』が大流行し、自分とはかけ離れているage嬢たちの生きざまに関心を持ったのがきっかけだ。そして、age嬢のように、派手な服や髪型で盛ることで自尊心を保っていた。社会人になってからは、盛るのではなく、本当の意味での清潔感を少しずつ獲得していって今に至る。

莉奈さんは21歳の頃、発達障害について扱った番組を見て、自分もそうなのではないかと疑い病院を受診。しかし、1軒目の病院では何度も通院をして発達障害かどうか検討をつけるWAIS-Ⅲのテストを受けたのにもかかわらず「PDD(広汎性発達障害)の傾向があるかもしれませんが、そんなに気にならない程度でしょう」という診断だった。

ちなみに広汎性発達障害は、2013年以降の『DSM-5』(米国精神医学会が発行する精神障害の診断と統計マニュアル)では自閉スペクトラム症に統合されている。気になっていたから受診したのに、あいまいな診断に納得できず2軒目の病院を受診。30分ほど医師と話しただけで「アスペルガー症候群(現・自閉スペクトラム症)ですね」と言われた。

1回目の診断と2回目の診断の結果を総合して、現在莉奈さんはASDと名乗っている。

自分の意思に関係なく「答えなければ」と思っていた

発達障害の支援に携わる人に出会った21歳を皮切りに、当事者会や自助会に参加するようになったが、実は3歳児検診の際、発達障害が判明していたことを24歳のときに知った。親が隠していたわけではなく、言い出せなかっただけだった。

「もともと、自分の意見をうまくまとめられない特性があったのですが、中学校で吹奏楽部に入ったら、嫌でも大きい声を出したり返事をしたりせざるをえない環境になったんです。だから、自分の意見が言えない特性が改善されたかのように見えて、親は安心していた部分があったのかもしれません。でも、実際は無理やりそう振る舞っていたので、負担は大きかったです。

楽器を演奏することや表現すること自体は好きなのですが、周りのメンバーと合わせないといけないのが本当に嫌で仕方なかったです。顧問から『自分の世界に入ったらダメだよ』と注意されるのに違和感を抱いていました」(莉奈さん)

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