SLの「メンテナンス」は各社でずいぶん違う 最新式と昔ながらの方法、どちらがベスト?
JR山口線・新山口-津和野間は蒸気機関車(SL)が営業運転する路線として知られる。この路線を走る「SLやまぐち号」は、C57がレギュラーとして走るが、C57が検査などで使用できない場合は、梅小路運転区からC56が応援に駆け付ける。
そこへ「デゴイチ」の愛称で名高いD51も2017年11月25日、SLやまぐち号のメンバーに加わった。
出発式当日、D51が入線する1番乗り場は、SLをバックに記念撮影に興じるファンでごったがえしていた。その様子を少し離れた場所から見ている人物がいた。JR西日本の下関総合車両所・新山口支所に勤務する藤井昭光さん。SLのメンテナンスを担当している。この日は非番だったが、「問題なく走れるか気になって」と様子を見に来たのだ。
このD51が製造されたのは1938年。今から80年も前のことだ。古い車両ゆえにメンテナンスには気が抜けない。
春から秋にかけての運行期間中はコンディションのチェックを毎日行う。運行前日の昼には釜に火を入れ、動作音を確認する。前日に点火した釜の火は土日の運行終了まで絶やさない。夜も当直の社員が火と水を絶やさないように見守り続ける。
D51復活までの苦難の道のり
これだけ手を尽くしても、当日の朝に不具合が生じて、走れなくなることもある。
日数の余裕があれば、C56にピンチヒッターを頼むこともできるが、当日のトラブルではそうはいかない。その場合はSLの代わりにディーゼル機関車が客車を牽引する。SLに乗ることを楽しみに山口までやってきた乗客にとってはさぞかし残念に違いない。
出発式を無事終え、SLやまぐち号は定刻どおり走り出した。乗っている人も見送る人もみな笑顔だ。ようやく、藤井さんもほっとした表情になった。
「お客様のがっかりした顔を見るのはつらい。今日はお客様の笑顔を見ることができて本当によかった」(藤井さん)
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