SLの「メンテナンス」は各社でずいぶん違う 最新式と昔ながらの方法、どちらがベスト?

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トラブルの理由は、車軸か、軸箱か、それとも両者のバランスに問題があるのか。模範解答はなく試行錯誤で見つけ出すしかない。最新の鉄道車両ならおよそ考えられない事態が起きるのがSLだ。藤井さんが列車の出発を祈るように見届けていた理由がよくわかった。

梅小路運転区でD51の足回りを検査するJR西日本の堀田正広さん(写真:ヒラオカスタジオ)

「毎日毎日。いつまでたっても勉強です」と語るのは、梅小路運転区でD51本線復活プロジェクトチームを牽引する堀田正広さん。30年以上にわたってSLの車両管理を行ってきた大ベテラン。それでも、日々、新たな発見があるのだという。

堀田さんが興味深い話をしてくれた。SLに使われる潤滑油は、かつては機械油が主流だった。しかし、SLを走らせているほかの鉄道会社の中には、より最新の油を使っているところもあるという。たとえば自動車のクラッチボックスなどに注入されるギアオイル。潤滑度が高く、可動部分の摩耗が格段に抑えられるという。機械油を使う場合に磨耗を抑えるためにあちこちのパーツを調整するという作業が、ギアオイルを使えばかなり軽減されるのだ。

全国で復活するSL、トラブルも多い

しかし、JR西日本はギアオイルのような新しい素材を取り入れず、昔からの方法を引き継いでいく選択を下した。「昔の油を使うと保守に大変な手間がかかる。でも、手間がかかる分だけ、保守の熟練度は高まります」と堀田さんは話す。

最新の素材を用いてより効率的にメンテナンスを行うのがよいのか、面倒でも昔ながらの方法にこだわるほうがよいのか。その解はない。ただ1つ言えるのは、SLの保守に関する技術は放っておくと失われてしまうかもしれないということだ。エジプトのピラミッドをどうやって設計し建造したのか、誰も説明できないように。

来島社長の言う「SLを後世に継承する」という発言の真意は、単にSLという列車を走らせ続けるのではなく、製造、保守、運行にかかわるあらゆるノウハウを後世に伝えることであった。

SLやまぐち号の運行開始は1979年。75年に室蘭本線でSLが牽引する最後の定期旅客列車が運行を終えてから4年後のことだ。大井川鐵道は一足早く、1976年にSLの復活運転を始めている。

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