「英国お召し列車」に日本製が採用されたワケ エリザベス女王が興味を示した「あの技術」
「快適で、とても速かったわ!」
日本はまだ幕末だった1842年6月13日正午、英国王として初めて「列車」に乗ったビクトリア女王は、乗り心地をそう日記帳に記した。ウィンザー城の近くにあるスラウ駅とロンドン・パディントン駅を結ぶ40キロメートル弱の汽車旅だ。
175年後の同じ日、ビクトリア女王が体験した汽車旅と同じ区間をエリザベス女王も追体験した。「お召し列車」に使われたのは、今年秋からその路線に投入される日本製車両。山口県下松市にある日立製作所笠戸事業所で造られた 「クラス802」と呼ばれるものだ。
エリザベス女王が乗った列車は、ビクトリア女王の「初乗り」の時と同じくスラウ駅を正午に出発。当時は同区間を約30分かけて走ったが、175年後のこの日は平均時速100キロメートルでパディントン駅まで19分で到着した。
プラットホームにあふれんばかりの人々に出迎えられたエリザベス女王はこの日、真新しい車両に自らの名前「Queen Elizabeth II」と名付けた。
日立の英国ビジネスに追い風か?
「エリザベス女王が来られた大変光栄な式典を迎えられて、感無量だ」
日立の執行役常務で鉄道ビジネスユニットCOOを務める正井健太郎氏はこの日、パディントン駅で「お召し列車」の到着を緊張の面持ちで出迎え、女王から直接ねぎらいの言葉を受けた。
正井氏は除幕式の後、「われわれの車両の安全性が高く評価されたことが今日の日につながったと思う」としたうえで、「われわれが設計・製造した車両が英国で受け入れられることは非常に感慨深い」と今回のイベントの意義をあらためて強調した。
英国では新たな高速専用線「ハイスピード2(HS2)」の建設計画が進められている。英国の未来の鍵を握るビッグプロジェクトには鉄道界でビッグスリーと呼ばれる3大車両メーカー(シーメンス、アルストム、ボンバルディア)だけでなく、日立も受注に意欲を燃やす。ビッグスリーの背中を追う日立としては、今回のイベントが大きな追い風になったかもしれない。
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