「英国お召し列車」に日本製が採用されたワケ エリザベス女王が興味を示した「あの技術」

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「女王が電車に乗って来るって聞いたから、お昼休みに駅に見に行っちゃった」

パディントン駅付近で働くOLは興奮してそうツイートした。人垣の後ろから必死で手を伸ばして撮った動画が添えられているのが微笑ましい。

どこからお召し列車の到着時間を聞きつけたのか、パディントン駅には女王を一目見ようとおびただしい数の人々が集結。テロ事件の直後だったこともあり、駅には大勢の警察官だけでなく爆発物探知犬が群衆の荷物を嗅ぎ回るという物々しい警戒態勢が取られた。

お召し列車でのエリザベス女王の案内役には、ブルネルの直系の子孫であるイザムバード・トーマス氏が充てられた。パディントン駅での命名式のあと、メディアのインタビューに応えたトーマス氏は「女王は、電気でもディーゼルでも走れるこの新しい列車の仕組みに興味を示しておられました」と、19分間のスラウからの車中での会話についてこう話していた。つまり、電化区間では電車として、非電化区間では電気式ディーゼル車として走れるこの車両の最大の特徴である「ハイブリッド(英国ではバイモード)」技術について、女王が口にしたというわけだ。ちなみに今回のお召し列車のパンタグラフは下がったまま、つまり架線下であってもディーゼル車として走って来たことになる。

ロンドン方先頭車両にはエリザベス女王の名が刻まれた(筆者撮影)

お召し列車の運転士という大役を務めたマーク・ウェイントン氏は、「日本からこの車両が来て以来、約1年にわたって訓練をして来た」としたうえで、「スムーズな走りは既存の車両とは比べものにならない。運転台の設計がよいからとても運転しやすい」とシンカンセンの系譜を持つ新型車両をほめちぎっていた。

営業運転が始まる前にもかかわらず、英国鉄道史にすばらしい足跡を残した日本製車両。女王にあやかって「乗りたい」と思う英国の人々がひとりでも増えれば、日本人としてこんなうれしいことはない。

さかい もとみ 在英ジャーナリスト

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Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

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