市販車を「ボンネットバス」化する匠のスゴ技 会津観光で外せない名物バスは訪日客も絶賛
運転席の前にエンジンが突き出た独特の形状は、まぎれもなく昔懐かしいボンネットバスである。しかし、明るい日差しを浴びてキラキラと輝く2つの車体はどこから見ても新車そのものだ。
3月31日、ボンネットバスの新車2台が福島県のJR会津若松駅前に登場した。その名は「ハイカラさん」。鶴ヶ城、会津武家屋敷、東山温泉、飯盛山などの観光スポットをぐるりと1周するバスだ。会津若松市内のバス事業者・会津乗合自動車(会津バス)が、老朽化していたボンネットバスを置き換える形で導入したのだ。
レトロな街並みによく似合う
ボンネットバスは昭和初期から30年代にかけて全国で活躍したバスの一形態。車体の長さに比べて客室スペースが少ないことから輸送効率が悪く、エンジンを車両後部に配して客室を広げた箱型バスに取って代わられた。
とはいえ、その特徴的な外観ゆえにボンネットバスは町の人気者だ。道路を走れば行き交う人の視線が集まる。路線バスから撤退したボンネットバスは観光・イベント用に活路を見いだしたが、年月が経つにつれ車両は老朽化で故障がちに。
修理をしようにも古い車両ゆえに部品の調達が難しい、そのため多くが廃車となり、今も現役で走るボンネットバスはわずかだ。滋賀県の近江鉄道が土日祝日を中心に運行してきた「彦根ご城下巡回バス」に使われたボンネットバスも50年近く走り続けた末、2017年で引退した。
では、会津バスが導入したボンネットバスはなぜ新車なのだろうか。
話はおよそ20年前にさかのぼる。1999年にJR東日本の観光列車「SLばんえつ物語」号が会津若松駅に乗り入れた頃だ。それまで会津エリアの観光手段といえば自家用車が主流だったが、鉄道で会津にやってきて、バスで市内観光する人が増え始めた。「二次交通の整備が必要だ」と考えた会津若松市を中心とした実行委員会は、2001年に観光地をめぐる新しいバスを導入することを決定。歴史のある会津の街並みにマッチするボンネットバスを採用した。
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