規制強化に揺れるバス、受注増で抱える悩み 更新需要中心では大増産には踏み切れない
全長12メートルのバスの骨組みがクレーンにぶら下げられてゆっくり流れていく。富山県にある三菱ふそうバス製造では受注拡大を受けて、残業や土曜日出勤を交えて増産ピッチを速めている。ラインの流れは緩やかに見えるが、「1日当たり生産台数を以前の5~6台から8台に増やした」(同社の菅野秀一社長)ほど、現場は繁忙だ。
販売台数は2ケタ増に
国内の大型バス(30人乗り以上の路線・観光バス)販売が急回復している。2015年には5260台と前年比16.9%も増加した(左図)。
製造しているのは、三菱ふそうトラック・バスの子会社と、日野自動車といすゞ自動車の合弁会社であるジェイ・バスの2社だけだ。
特に三菱ふそうは、本社のある川崎工場から、バス製造会社のある富山へ生産応援を実施。現地でも例年10人前後の新人社員を15年は19人に増やし対応に追われている。
それでも生産台数を増やすのは容易ではない。大型バスの生産台数は三菱ふそうで1日当たり8台。ジェイ・バスも同19台にすぎない。
というのも、大型バスはすべてが受注生産で、会社や注文によって、カーテンやフロアマットが各車で異なるからだ。最近では乗り心地のよい高級シートやトイレの設置で他社と差別化する会社も増えた。
通常床下に設置するエアコンを天井側に移して「爆買い」する訪日外国人向けに荷物を積むためにトランク容積を拡充することも可能。仕様が多岐にわたり、作業も複雑なことから、バスの製造は注文住宅に例えられる。
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