規制強化に揺れるバス、受注増で抱える悩み 更新需要中心では大増産には踏み切れない

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生産能力が限られているとはいえ、受注残を積み上げたままにはしておけない。三菱ふそうバス製造は数億円を投じ、2015年夏に塗装ラインを再編した。

大型バスと小型バスで共用していた塗装ラインを、大型用と小型用の二つに分離したことで、納期を1年超から10カ月に短縮。「今後は設備の改善や作業の効率化で1日でも納期を短くしたい」と菅野社長は語る。

ジェイ・バスも「人員増強や生産効率化による能力増強を検討している」(いすゞ自動車の川原誠専務)もようだ。

バス需要増加の背景に運賃制度の改定

受注が増えたにもかかわらず、バスを供給する両社が設備投資に慎重なのは、この状況がいつまで続くか見極められないから。2020年の東京五輪では、選手や観光客の輸送のため、大型バスの莫大な需要が一時的に見込まれる。だがその後の需要は不透明だ。

実際、需要回復を支えるのは、「訪日外国人客よりも貸し切りバス運賃の制度改正効果のほうが大きい」と、日本バス協会の船戸裕司常務理事は指摘する。

貸し切りバスは2000年に免許制から許可制に切り替わり、新規参入者の増加によって一気に低価格競争が進んでいった(右図)。

転換点となったのは2012年4月、関越自動車道での高速ツアーバス事故だった。運転士の居眠りが原因とされ、価格競争でもたらされた低水準の賃金や長距離運転という労働環境が問題化した。

2014年に国土交通省は、バスの安全運行に投資できるだけの収益が上がるよう設計された、新しい運賃制度を導入。行き過ぎた価格競争に歯止めをかけた。

規制緩和から強化に舵を切った影響は大きい。日本バス協会によれば、貸し切りバス事業者のうち2013年度には40%が経常赤字だったが、運賃値上げの効果によって、2014年度は24%に減少。直近では原油安による燃料費減も加わり、バスの買い替えを後押しする要因となっている。

ただ、新運賃制度導入とともに、安全対策で長距離運行時の交代運転士の配置基準が厳格化された。全国的な人手不足も重なり、「運転士が危機的に不足している」(船戸常務理事)のが、新たな悩みの種になっている。

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