市販車を「ボンネットバス」化する匠のスゴ技 会津観光で外せない名物バスは訪日客も絶賛

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運転席を後退させた状態のバス。エンジンはむき出し(記者撮影)

乗用車と違い、バスは受注生産だ。メーカーに注文しても納車までには結構な時間がかかる。2台のローザが工場に届くまでの間、会津バスとヴィ・クルーはバスのデザイン作成に追われた。たとえば、2台のボンネットバスにどんな色を施すか。数パターンのデザインの中から選ばれたのはロイヤルブルーとワインレッドだった。

「ハイカラさん」の内装。会津木綿を使ったカラフルなシートが印象的だ(記者撮影)

昨年10月、2台のローザがヴィ・クルーに到着した。それからおよそ3カ月かけて基幹部分を完成状態に仕上げ、その後2カ月かけて室内塗装を施し、車両外側の塗装も行った。シートには伝統的工芸品である会津木綿を使用し、降車ボタンには会津のマスコット「赤べこ」をあしらうなど、地元らしさをふんだんに取り入れた。「スケジュール的にはかなり厳しかったが、予定通りに納車できた」(三星さん)。

会津バスの新型ボンネットバス「ハイカラさん」。旧型に比べ重厚感が増した(記者撮影)

2代目のハイカラさんは、先代の雰囲気を残しつつ、ボンネットカバーが大きくなり重厚感のある仕上がりになった。いっぽうで、青と赤の色合いが明るく、会津の街中を走るとかなりの注目を集めそうだ。

訪日客呼び込みの武器になれるか

会津バスはバス調達に多額の費用をかけたというが、かといって、ヴィ・クルー側にとって儲けの大きいビジネスだったというわけではない。開発費用がかなりの金額に膨らんだためだ。

3月31日の出発式後、新車の「ハイカラさん」には大勢の客が乗り込んだ。訪日外国人客の取り込みに大きな期待が寄せられている(記者撮影)

もちろんヴィ・クルーにも目算はある。ハイカラさんの成功で、ボンネットバス導入を検討する自治体やバス会社が出てくるかもしれない。そのとき、もしベースの車両がローザなら、ゼロから改造する競合他社に対し、すでに実績のあるヴィ・クルーはコストと信頼性の両面で優位に立てる。

訪日外国人客(インバウンド)の急増に沸く観光地が全国で増える中、東日本大震災に見舞われた東北地方は取り組みが出遅れた。会津若松市を訪れた訪日客数はようやく震災前の水準に戻った程度にすぎない。しかし、「アジアから来た観光客の中には、ボンネットバスを見て驚く人もいる」と佐藤社長は言う。

米国ではスクールバスなどでボンネットバスが今も活躍するが、中国や台湾ではボンネットバスは珍しい存在のようだ。だとすると、ボンネットバスは今後、東北が訪日客誘致で巻き返すための強力な武器になるかもしれない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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