SLの「メンテナンス」は各社でずいぶん違う 最新式と昔ながらの方法、どちらがベスト?

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このD51はそれまで「SLスチーム号」として、わずか1kmの距離を時速10kmでゆっくりと走っていた。本線投入が決まったのは2014年10月のことだ。老朽化したC56の置き換えとして、比較的状態のよいD51が選ばれた。

「SLやまぐち」号のヘッドマークを付けたD51は大人気(記者撮影)

同じタイミングで、2016年4月に開業する京都鉄道博物館にSL専用検修庫を新設することも決まった。梅小路運転区では簡単な検査しか行うことができなかったが、天井クレーンなどの大型設備が設置されることで、SLをバラバラにして念入りに検査することが可能になった。D51に大規模修繕を施し、本線を走れるような改造を行う。これが新設される検修庫の初仕事となる。

「近代日本の産業遺産の1つであるSLを後世に継承することは、当社の社会的使命である」(JR西日本・来島達夫社長)。D51の本線復活運転は、高邁な目標を掲げてスタートしたプロジェクトだった。

だが、作業は一筋縄では進まなかった。そもそも、このD51はSLスチーム号として走っていたといっても本線運転ではないので、営業運転する車両が行うハイレベルの検査は行っていない。実際、D51をバラバラにしてみたら、かなりのパーツを新造せざるをえないことがわかった。

古いSLに最新式の機器が

D51運転台の後部。石炭の取り出し口の隣に最新のATSが設置されている(写真:ヒラオカスタジオ)

SLが走っていた頃と現在とでは、鉄道のルールがかなり異なっている。たとえば、現在は列車が停止信号を越えて進行しようとした場合に、列車のブレーキを自動的にかけるATS(自動列車停止装置)の設置が進んでいるが、SLの全盛期である昭和20〜30年代には、まだ普及していなかった。とはいえ、現在のルールではSLにもATSの設置義務がある。D51には最新のATSが搭載されることになった。

狭い運転台の中にこうした機器を新たに設置するのは簡単ではない。結局、ATSは石炭の取り出し口の隣に設置された。大昔のSLの内部に最新の保安装置が取り付けられているのはどこかシュールである。

煙室や火室が新製され、SLの心臓部であるボイラー回りも新品同様になった。「今後数十年は現役運行が可能」(JR西日本)という。ようやくオーバーホールを終えたD51だが、2016年10月の試運転を前に燃料や水を積載する炭水車の軸の一部が潤滑不良で発熱し損傷する「軸焼け」トラブルに見舞われた。車軸を新たに製造し、再び試運転を行ったのは17年5月。予定より半年も遅れてしまった。不具合が起きないように念入りに整備をしても、トラブルは絶えないのだ。

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