いい図書館を持っている町が生き残れる必然 戦略拠点化できるかがカギに
もう1つは、「人材不足」の壁。役所では、それぞれの部門には専門知識を持った職員などがいるものの、建築と図書館運営の両方に関する知識と経験を持つ人材はなかなかいない。そして、もう1つは、「単年度予算制」の壁で、複数年度にわたるアイデアや革新的なアイデアを実現しにくい要因となっている。
これらの問題を解決するためには、部署間調整を行う専門部署の設置や、首長の強力なリーダーシップの下、計画を主導する、といった方法が必要だ。特に首長のリーダーシップという点で注目したいのが、今年2018年初夏に着工、2019年に竣工予定の「那須塩原市駅前図書館(仮称)」計画である。
同市では、地域の交流を促すために黒磯駅周辺地区を整備する「都市再生整備計画事業」が策定され、その後、市の生涯学習推進プランと連動し、図書館運営とまちづくりを統合的に進めようとしている。
従来の図書館機能を超える多様な運営に
最終的にまとめられた図書館の基本計画では、「知のストックと読書の幅を広げるマルチメディア・プレイス」という基本コンセプトの下、従来の図書館機能だけではない多様な運営をもくろんでいる。
具体的には、デジタルライブラリーによる半永久的な知のストック集積や、既存館では対応できない蔵書バラエティの拡充、多様な読書環境の提供、子ども向けサービスの充実、アートステーションとしての機能展開などを想定している。目下、運営を手掛ける部署に引き継いでいるところだが、那須塩原市は部署間調整や首長のリーダーシップのおかげで、住民と自治体の思いが詰まった計画やコンセプトの実現に向かっている。
那須塩原市が目標としているのは、図書館の成果や活動目標を定義すると同時に、自治体のレジリエンスを強化することだ。同市にとって、「図書館が何を提供し、市民の中に何を醸成したいのか」ということは、今後「どんな町として生き残っていきたいか」という発想とイコールだからである。
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