いい図書館を持っている町が生き残れる必然 戦略拠点化できるかがカギに

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具体的に、近年できた複合型図書館を例に挙げ、その自治体にとって図書館がどういった機能を果たすようになっているのかを見てみよう。

たとえば、兵庫県明石市にある「あかし市民図書館」は物販、飲食、サービス、クリニックなどの商業施設からなる「パピオスあかし」内に位置している。上層階には子育て関連の行政窓口が設置されており、子ども向けの行事を意識した生活者密着型の図書館になっている。4カ月検診のために、健康センターを訪れた母子に対して読み聞かせを行うなど、施設の複合化のメリットを生かしたサービスを提供している。

住民ニーズに合わせて蔵書を分類

一方、人口規模の小さな町において、図書館の細部に至るまで地域密着にこだわったユニークな図書館も誕生している。人口2万7000人ほどの北海道中川郡幕別町にある「幕別町図書館」がそれだ。

通常図書館の本は、哲学・宗教、歴史・地理や社会科学、文学など10の大分類で構成される「日本十進分類法(NDC)」と呼ばれる手法で本が分けられ、配架されている。だが、幕別町図書館では、地域のニーズや課題に合った独自の分類法を自ら作ることで、地域に暮らす人が本に親しみやすくなる分類を採用。ここには、地域社会の課題を市民の学びから解決しようという強い姿勢がうかがえる。

さまざまな可能性を感じる図書館だが、理想の図書館を作るのには、現状では大きく3つの壁があると言える。

1つめは、「縦割り組織」の壁だ。図書館の建設が行われる場合、一般的に建築系部署が施設計画を進め、完成後、教育系部署に管轄が引き継がれるのだが、この部署横断性に問題が潜んでいる。それは、引き継ぎのタイミングで建設計画の目的や目標と、実際の運営の目的や目標がずれてしまう可能性だ。

縦割り組織で横の連携がないため、当初の目的や目標が担当部署以外とうまく共有されていないことは少なくない。たとえば、まちづくりなどを担う建築系部署が「街のにぎわいを取り戻す」ことを目的として図書館を計画していたとしても、教育系部署の目的は「にぎわいを取り戻す」ことではないので、まったく違う目的や目標の下に運営されてしまう、ということもありうる。

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