起業を甘く考えている人が知らない怖い真実 会社で新規事業を立ち上げるのとワケが違う

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新規事業といっても、それら有形無形の資産をベースに、サラリーマンとして雇われ、一社員として業務を遂行しているにすぎず、本当の意味でゼロからイチへの立ち上げを経験している人はほとんどいないのが実情です。

一度経験してみればわかりますが、会社のバックアップもなくゼロから起業すると地獄を見ます。

土台が何もないところからビジネスプランを練り、自分でおカネを用意し、不動産を借りて会社を登記し、売り上げが立っていないのに将来のプランだけで銀行と交渉しておカネを借り、まったく実績もない状態で営業をし、販売ルートを作り、外部に発注し、人を雇い、製品やサービスを完成させ、販売を開始しなければなりません。そこで売り上げがあがり、事業が回転を始めて、ようやくできるのが「イチ」です。

大手企業の新規事業との違い

しかも、事業が軌道に乗り、安定するまでには、いくつもの高い山が立ちはだかります。

大手企業の新規事業の担当になった場合、その時点でたいていイチはできているか、できるであろうことが目に見えています。それどころか、10までは順調に進みます。大企業には、そこまでの力があるからです。

逆にいえば、2〜3年でそこまで進むことが明確でなければ、社内決裁が下りず、絶対に手を出しません。

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ですから、大きな会社の社員の立場で立ち上げから参画したとしても、ゼロからの起業に比べればはるかに容易です。関連企業も協力企業も取引先企業もしっかりあって、さまざまな助力を得ることも可能です。

また、新規事業といっても、会社の本業に隣接する事業展開として実施するのが普通でしょう。たとえば、建設会社が不動産関連事業を始める、卸事業をしてきた会社が同じ商品で小売事業を始める、といったように、水平方向や垂直方向に事業を展開します。それは、顧客や競合他社など市場がよく見えていて、商品、ブランド、テクノロジー、ネットワーク、設備など、蓄積してきた資産を活用することができるからです。

もし、そうしたもくろみがないにもかかわらず、関連性のまったくない新規事業を始めるとしたらどうでしょう。たとえば、地方の建設会社が「儲かっているから」と、突然畑違いの芸能事務所を東京で始めることを考えたとしたら? その社長はよほど愚かなのか、あるいは余った利益で道楽をしているかのどちらかでしょう。間違いなく事業としては失敗します。

三戸 政和 日本創生投資 代表取締役社長

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みと まさかず / Masakazu Mito

1978年兵庫県生まれ。同志社大学卒業後、2005年ソフトバンク・インベストメント(現SBIインベストメント)入社。ベンチャーキャピタリストとしてベンチャー投資や投資先にてM&A、株式上場支援などを行う。2011年兵庫県議会議員に当選し、行政改革を推進。2014年地元の加古川市長選挙に出馬するも落選。2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業承継・事業再生などに関するバイアウト投資を行っている。堀江貴文氏が主宰する「堀江道場」のオブザーバーなども務める。著書に『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい・会計編』(講談社)など。

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