起業を甘く考えている人が知らない怖い真実

会社で新規事業を立ち上げるのとワケが違う

結果的には、事業立ち上げの依頼者が相応の資金を持っていたため、これらのトラブルはなんとか乗り切ることができました。しかし、これが脱サラで始めた私個人の会社だったとしたら、どうでしょう。立ち上げの段階で1000万円もの資金が飛べば、一発でアウト。倒産やむなしだったでしょう。

サラリーマンはゼロを知らない

ゼロからの起業、いわゆるスタートアップというものは、壁、わな、山、谷、落とし穴……日本語で表現されるありとあらゆる障害に取り囲まれています。経営の初心者がトライアル・アンド・エラーでこれらの障害をクリアして、立ち上げに成功してイチとなり、さらに1-10の飛躍的な成長を成し遂げ、人材、設備、顧客、仕入れ、製造、サービスが整い、経営がある程度安定するまでに、およそ10年はかかるのではないでしょうか。

それは本当にしんどい10年です。

日本では、起業して5年後に残っている会社は半分以下の42%、10年後に残っている会社は、4分の1以下のたった23%しかありません。これは、製造業を対象にした経済産業省工業統計表「開業年次別 事業所の経過年数別生存率」の調査データですが、製造業は小売りやサービス業よりも廃業率が低いので、全体の生存率はさらに低いといえるでしょう。強いモチベーションで独立開業し、リスクを取ることができる起業家たちが全力で闘って、この数字なのです。

起業して自分で事業を作ることは、ゼロからイチを生み出し、ようやくイチができたものを10まで自分で育てていくことです。それができる人は、本当に一握りです。天才であり、ある意味、変人です。でも、このことに気づいている人はあまりいません。

一方、サラリーマンの中間管理職のほとんどは、100の規模の事業組織の中で、その一部分を管理し、それが10なら、10のまま維持することを仕事にしてきたといえます。そのうえで、理想的には10を11にし、11を12にして全体をさらに大きくすることに寄与する。あるいは逆に、10を5へとダウンサイジングしたり、リストラのため5をゼロにするケースもあるかもしれません。

いずれにせよ、簡単にいえば、「まったくゼロから新しいものを創出する」という経験がないのが、サラリーマンです。

「いや、私は新規事業を立ち上げたことがある!」

というあなた。それはすばらしい経験だと思います。

でも、それは会社に守られ、ヒト、モノ、カネというすでに存在する会社の資産と、会社がこれまでに積み上げた信用やネットワークを土台にしてのものであるはずです。

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