起業を甘く考えている人が知らない怖い真実 会社で新規事業を立ち上げるのとワケが違う

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当時の私は、貿易や食品卸に関しては素人でしたから、起業以前に、事業そのものについてまったくのゼロから調べ、学ぶ必要に迫られました。また、日本のビジネスのルールはわかっていたものの、海外のルールは日本のそれとは違います。ロンドンの商工会議所に行き、弁護士などを紹介してもらって、こちらの面でもイチから勉強し直しです。

私たちの事業は和牛の輸入販売です。当然ながら、イギリスの側に立って、日本から和牛を輸入するための環境を整える必要があります。私は通関業者を総当たりし、最も良いであろう業者を探しました。

次に、冷蔵倉庫を作るために倉庫会社を探しました。倉庫の管理は、人を雇用して自社で行うのか、それともアウトソーシングするのかを決めなければなりません。

その次は物流です。

日本からイギリスまでの国際輸送、輸入通関から倉庫まで運ぶ拠点間輸送、倉庫から店舗に運ぶ配達について、それぞれ業者を選定して契約を交わしていきます。そのためには、店舗への輸送法、時間帯や運ぶ場所、決済方法などを取り決め、その過程で出てくるレストランのさまざまな要求に対しても、きめ細かく対応していく必要があります。イギリスには日本のクロネコヤマトや佐川急便のように、時間どおりにきっちり届けてくれる配達業者はありませんので、その面でも細かな条件交渉をしなければなりませんでした。

すべてを自分たちで整えていかなくてはいけない

要するに、事業を作るため、肉の販売先を見つけるだけでなく、事業を行うためのインフラから何から、すべてを自分たちで整えていかなくてはいけなかったのです。縦割りのサラリーマン組織であれば、自分が行う事業のインフラはすでに整っているため、それを”当たり前”に感じている人が多く、起業の最初からつまずく人が結構いるのです。

インフラ作りでいい感じに話が進んだからといって、簡単に取引先を信用してはいけません。私が、ロンドンで契約した倉庫業者は、最初は調子がよかったものの、途中から契約で定められた検品作業をしなくなり、1年間で契約解消の決断をせざるをえなくなりました。

実は、私たちはその業者の倉庫の中に500万円ほどのおカネをかけて冷蔵倉庫を作っていました。しかし持ち運べるような設備ではないため、そのまま置いていくことになって、大きな損失になりました。

また、日本からイギリスへ冷蔵輸送されているはずの和牛が、温度設定のミスですべて冷凍になって運ばれてきたこともありました。牛肉は凍ってしまうと品質が落ち、高級な和牛としては売り物にならなくなります。このひとつのミスで約500万円のマイナス……。

こうしたさまざまなリスクをヘッジするために保険を掛けておくべきでしたが、恥ずかしながら、そういう方法を初心者の私たちは知りませんでした。

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