起業を甘く考えている人が知らない怖い真実 会社で新規事業を立ち上げるのとワケが違う

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そして、甘く考えがちなのは自分自身の人件費です。「1年ぐらい収入がなくても生活できる程度のおカネは持っている」と言って起業する人がいます。甘すぎます。では、1年経っても収入がなかったらどうなるのでしょうか。一文なしです。文字どおり、食べることができなくなるのです。

起業した後に何より重要なことは、とにかく早く売り上げをあげて、小さくてもいいので早急に事業を回すことです。そうして収入を得て、走り出すことです。これができないと何も始まりません。

事業が回り出したら、銀行もおカネを貸してくれます。将来的に大きく拡大する期待が持てる事業であれば、個人投資家やベンチャーキャピタルが投資してくれるかもしれません。

起業後に事業を少しでも早く回すには、やはり事前の準備が重要です。「これならば絶対に売れる」という自信のある商品を練り込み、作った瞬間に絶対に買ってくれるという顧客のリストを整え、協力会社が必要であれば見積もりと確約を取りつけます。

そして、必要な人材を確保し、資金を用意し、希望的観測ではなく、「これならば確実に行ける」という計画を立て、固い収支計画を作ります(もちろん自分の給料もそこに入っていること)。そのうえで、プランに穴がないか、思い込みがないかと何度も精査したうえで、もう会社を作らないと何も始まらない……という最後の最後の段階で、登記をして「会社を作る」のです。

それでも、大多数の人が失敗します。それが起業です。独立して数年やって、再度サラリーマンに戻っていく人はたくさんいます。

ベンチャーキャピタルで1000社以上の投資検討をしてきた私は、死屍累々のベンチャー企業を見てきました。

法律が変わる2006年以前は、株式会社を登記するためには資本金1000万円以上が必要でした。有限会社を登記するにも資本金300万円以上が必要でした。かつてこの制約があったのは、「最低でもその程度の資金がなくては、会社というものは回らない」という意味も含まれていたのです。

私のロンドン起業「失敗記」

私は知り合いに頼まれて、イギリス・ロンドンで神戸ビーフのプロモーション会社の立ち上げを行ったことがあります。自分でおカネと最初の事業アイデアを出したわけではなく、欧州展開を進める会社の立ち上げミッションにかかわったという立場で、やや”バーチャルな”起業体験でしたが、やはり、ゼロから事業(会社)を作ることの苦しみを味わいました。

起業する際は、会社を設立し、事業を行ううえでどのようなルールや法律が存在しているか調べるところから始まります。どのような認証を得て、どう定款を作って会社登記をすればいいのか、また、どのように業務オペレーションを組み立て、それを回すために、どのような人員構成が必要なのか、労働関連法令を考えたうえでの採用はどうすればいいのかなどを事前に考えて、後々の業務がスムーズに進むか、しっかり勉強し、よりよい形で会社を作っていくことが必要です。

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