40代の迷える子羊たちが求める「正解」の誤謬 社内に残るか外に出るか「納得解」を求めよう

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Q)会社名や肩書がなくても社会で通用するのか、自分の本当の実力が知りたいです。具体的に何をすればわかるでしょうか?

A)本当の自分の実力が知りたいなら、会社ブランドや役職ブランドが通用しない場で、むき身の自分を鍛える練習をするとよいでしょう。名刺が通用しない世界で、自分のコミュニケーション力を試してみるのです。

子どもがいるなら地域のコミュニティに顔を出すのがもっとも早いですが、被災地や途上国のボランティアに出かけて、そこで自分プレゼンの練習をしながら、名刺に頼らない人間関係のネットワークを広げていくのも1つの手だと思います。

私は東日本大震災で被害を受けた宮城県石巻市雄勝の支援を続けていますが、震災直後から支援に入った人たちは、災害によって何もかも破壊されたあとでは、名刺や肩書なんて、その場ではまったく通用しないことを痛感したと思います。そこでは、大会社の部長の肩書を持つ人よりも、たとえば炊き出しの技術を持っていたり、ボロボロになったアルバムの写真を修復できたりする人たちのほうが受け入れられたし、実際に役に立てたのです。亡くなった方に死化粧するボランティアをする人も。

私も当初、気仙沼高校の避難所で炊き出しを手伝ったとき、提供できる技術が何もありませんでした。それでも何かできることはないかと考え、子どもたちにおもちゃを配る際、ひたすら「あっち向いてホイ」をやりました。結局、「3時間続けてあっち向いてホイをやった人」としてタイトルをもらいましたが(笑)。

40代は「強制的モードチェンジ」が連続する時期

40代は、子会社への出向や突然の異動命令、あるいは自分や家族の病気、反抗期の子どもや夫婦の問題など、「強制的なモードチェンジ」が波のようにやってくる時期で、抱える問題もそれぞれ個別になってきます。

『45歳の教科書 戦略的「モードチェンジ」のすすめ』(PHP研究所)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

ですから基本的に「こうすればOK」という「正解」はないと思ったほうがいいでしょう。今後40代が直面していく問題は、ほかのどの世代も体験したことのない、前例のないことなのです。

そう言うと厳しい世の中のようですが、見方を変えれば、誰からも自由に、自分の幸せを自分で作り上げることができる時代とも言えます。

そうした時代には、柔らかアタマで目の前の問題に「正解」ではなく当面の「納得解」を導く「情報編集力」がますます大事になります。存在しない「正解」を追い求めていくと、病気になる以外ないんじゃないでしょうか。

藤原 和博 教育改革実践家、「朝礼だけの学校」校長

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ふじはら かずひろ / Kazuhiro Fujihara

元杉並区立和田中学校校長。元リクルート社フェロー。『藤原和博の必ず食える1%の人になる方法』(東洋経済新報社)など著書多数。講演会は1200回、動員数20万人を超える人気講師としても活躍中。

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