僕たちは発達障害を言い訳にしてはいけない 当事者3人から見える社会との向き合い方

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光武:そういう発想なんです。自分のために人を利用するという発想の逆に見えるけど、実は根本が一緒なんですよね。結局、相手がここで満足をしてくれたほうが自分にとってリターンが大きいから、自分は相手にとって利になることをしてあげるという。

山村:自分自身が何かしらの受け皿をもっと広くもっていれば、社会も受け皿を広くしてくれるのではないかと思います。

定型発達の人だって生きづらい

光武:僕、よくバーで言っているのが、「この社会で定型発達だって生きづらいことを発達障害者は知っているのか?」ということ。発達障害者は「生きづらい、生きづらい」と言っているけど、定型だって生きづらいんだと。そのことを考えもしないで自分のことばっかり言ったって、受け入れてもらえるわけないでしょうと。受け皿を作ってほしいと本当に思うのなら、まず相手のことを受け入れなさい。そんなこともしないで一方的に「自分を受け入れて、受け入れて」と言うのは、かまってちゃんと一緒だぞ、と。

吉田:それか5歳児ですね。

山村:自分は「社会がはじき出したから社会が受け皿を作るのが道理じゃないのか」と言いましたが、矛盾しているようで実は平行線だなと思っています。要は社会から攻撃されたから「自分たちはマイノリティだからもっと配慮して」という攻撃をしている状態ですよね。今、定型発達の人は「君たちは扱いづらい」、発達障害の人は「もっと配慮して」と言う、お互いにドッジボールをしているんですよね。

吉田:Lose-Loseですね(笑)。

光武:そこでわれわれが立つべきポイントはガンジーです。どんなことを言われてもニコニコしているの。でも非暴力だから。不服従でいい。おかしいことに対しては「でもそれおかしいですよね」と言う。でも、一切相手には攻撃しない。僕はそのスタンスなので、それがスタッフの採用基準です。

バーの名前である「BRATs」ってそういう意味も含めています。直訳すると「悪ガキ」ですが、それを自分たちで名乗るところに意味を見出しています。「お前たち悪ガキだろ?」と言われたとき「いや、違うよ。障害なんだよ」と言ったら攻撃なんです。だから、こちらは度量を見せて「うん、悪ガキだよ!」って言いたいです。

吉田:やっと中二病を出した(笑)。

一同:(笑)

普段の発達障害当事者インタビューとはムードが違い、和気あいあいと時おりギャグも交えながら行われた座談会。彼ら自身当事者であり、バーで多くの当事者やグレーゾーンの方と接しているため、筆者からは想像もつかない斬新な意見が次々と飛び出した。現在は高田馬場のレンタルスペースでバーを運営しているが、5月に移転してさらに本格的な活動を続けるという。発達障害に限らず「生きづらさ」の闇に閉じ込められている人は一度足を運んでみると、少し気持ちが楽になれるかもしれない。

姫野 桂 フリーライター

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ひめの けい / Kei Himeno

1987年生まれ。宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをしつつヴィジュアル系バンドの追っかけに明け暮れる。現在は週刊誌やWebなどで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好きすぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。趣味はサウナ。

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