12年前の苦い記憶、加地亮が語るドイツW杯 自分が出られなかった初戦で事実上終わった

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結局、クロアチア戦は0-0で引き分けるのが精一杯。加地は6月22日の最終戦・ブラジル戦(ドルトムント)にも先発フル出場を果たしたが、玉田圭司(J1・名古屋グランパス)の先制弾が逆に相手の本気を引き出し、結果的に1-4の惨敗。華やかな夢舞台から絶望の淵に突き落とされることになった。

すべてを出し切らないと勝てない

「ワールドカップって1次リーグだけだと270分間しかない。そのために全員ができることをすべてやり切らないと勝てないんだと痛感させられました。

だからこそ、今の日本代表も全員の考えを一致させて、西野さんが目指すサッカーを全うするしかない。西野さんがロシアで守備的な戦いをするのか、攻撃的なサッカーを仕掛けるのかはまだ分かりませんが、僕の知っている西野さんはボールを支配しながら攻めを仕掛けるスタイルを志向する監督だった。

そういう戦いに舵を切るのであれば、日本人の武器である俊敏性を生かして狭いエリアでどのくらい相手を崩せるかがカギになってきます。

プレースピードや頭のスピードを上げ、ボールを出して動く回数を増やしながら、相手を凌駕していければ、勝機を見いだせると思う。僕らがワールドカップで勝てなかった分、今の後輩たちには『勝つための最短距離』を徹底的に追求してほしい。そして、未来の日本サッカーにつながる戦いを見せてもらいたいと思います」

かつて日本の右サイドを疾走していた男の提言がどこまで後輩たちに届くのか。加地の願いを少しでも彼らが聞き届けてくれることを強く祈りたい。

(文中敬称略、後編に続く)

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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