12年前の苦い記憶、加地亮が語るドイツW杯 自分が出られなかった初戦で事実上終わった

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「暑さにやられて後半、みんなの動きがガクッと落ちたのは感じました。向こうはそこに勝負を賭けていたと思います。僕は『何とか引き分けでいいから終わってくれ』と祈っていたけど、ああなると耐えるのは難しい。後から考えると、あの初戦でワールドカップは終わっていたかもしれない」と加地は苦渋の表情を浮かべた。自身がピッチに立てない無力感、自責の念も覚えていたはずだ。

いきなり崖っぷちに立たされた日本だが、気を取り直して前を向くしかない。彼は6月18日のクロアチア戦(ニュルンベルク)にすべてを懸けた。この試合も前半にPKを献上するなど苦境を強いられたが、川口能活(現J3・SC相模原)のスーパーセーブで難を逃れ、0-0で折り返す。そして迎えた後半6分、加地が最大の決定機をお膳立てする。

高原とのワンツーでペナルティエリア内の右から駆け上がった背番号21は絶妙の折り返しをゴール前に送った。次の瞬間、柳沢敦(現J1・鹿島アントラーズコーチ)がフリーで右足を合わせたが、シュートは無人のゴール上を越えていった。いわゆる「QBK(急にボールが来たから)」と言われるシーンだった。

ドイツの僕らに足りなかったこと

「『シュート性のボールをとりあえず逆サイドに飛ばそう。そうすれば誰かに合うやろ』と思って、強めのボールを蹴ったんです。自分的にはシュートだったけど、ちょっとマイナスに引っかかった感じでした。そこにヤナギさんが飛び込んできた。あの動き出しの鋭さはさすがヤナギさん。結果的に外れたのは仕方ないこと。誰も責めることはできないと僕は思います。

ただ、1つ言えるのは、本当に強いチームはああいうチャンスを逃さず決めてくる。落ち着いて仕留められる。それが強豪たるゆえんです。ワールドカップという舞台は戦術とかチーム作りとかはすべてもみ消されて、勝ち負けという結果しか残らない。魂と魂のぶつかり合いなんです。気持ちの強いほうが勝つ。もしかしたらドイツの僕らはそこが足りなかったかもしれないですね」

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