「2%インフレ」実現に必要な政策とは何か

安倍内閣退陣のテールリスクは後退している

その後再任された黒田東彦日銀総裁などからのメッセージに変わりはないが、市場の一部にあった早期金融引き締めの思惑は薄れている。米国株の乱高下とともに最近はドル円が上下しているが、為替は1ドル=105円付近で底固めしつつあるようにみえる。先のコラムで、筆者は、4月から新たな日銀執行部になることをきっかけに、「緩和強化策の是非などについての政策決定会合での議論が活発化するため、円高懸念が和らぐ」、と述べたがこの見通しは変わらない。

確かに、米国のトランプ政権による強硬な通商政策が引き続き金融市場の市場心理を悪化させ、この政策がドル安をもたらすとの因果関係不明な思惑は根強い。筆者は経済を停滞させるような米中間の貿易戦争が激化するとは予想しておらず、またユーロドルでみても2月中旬がドル安のピークとなっており、ドル安は止まりつつあると筆者は考えている。仮に筆者の楽観的な見方が正しければ、日銀への信認復活による緩やかなドル高円安が日本経済の浮上を後押しすることになる。

金融・財政政策についての建設的議論が必要

財政政策については、将来の財政収支想定が柔軟になったことに加え2019年度の予算策定について官邸がリーダーシップを握ろうとする姿勢、がみられる。2019年10月に予定されている消費増税の判断を含めて、安倍政権は経済成長優先で財政政策を柔軟に使うだろう。だが3月以降の森友学園問題による政治混乱を経た、官邸のポリティカル・キャピタル(政治的資源)の変化が、今後の財政政策運営にどのように影響するかは現状明らかではない。

岩田規久男前日銀副総裁は、2013年の大規模な金融緩和でインフレ率が上昇したが、2014年の消費増税がダメージとなり、2%インフレ実現のシナリオが崩れたとの認識を示し、金融緩和政策を成功させるために緊縮財政のペースを落とす必要性に言及している。同氏によるこうした見解は筆者にとってはほぼ想定どおりだが、2014年の消費増税の必要性を強く示していた黒田日銀総裁と異なる本音を、退任直後に示したことになる。

この岩田氏の発言によって、財政政策の是非について、日銀自身が立場を示すことが難しい状況が改めて明らかになった。ただ、金融・財政政策の双方が総需要、インフレ率に及ぼす限り、金融・財政政策のポリシーミックスについて建設的に議論することは必要だろう。米国では、FRB(連邦準備制度理事会)議長などが財政政策について見解を示すことは普通である。金融・財政政策それぞれの縄張り意識が、経済正常化・脱デフレのために建設的な議論を妨げているのであれば、それは不幸なことではないか。

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