そこで、以下では、①日銀による量的金融緩和のプラス効果、②2014年の消費増税に伴う緊縮財政政策のマイナス効果、を定量的に筆者なりに比較してみる。日銀のマクロ経済モデルによる試算では、日銀による2013年以降の金融緩和政策により、1年間で最大1.4%GDPを押し上げるとされている。
一方、消費増税による約8兆円の家計の可処分所得押し下げはGDPの1.6%に相当する。
増税の乗数効果は通常1未満なので、増税によるGDP押し下げは最大で1.6%程度。また、増税前後の駆け込み需要(2014年1-3月)とその反動減(同年4-6月)の影響を取り除くために、暦年ベースの実質個人消費の変動をみてみよう。
すると、2013年は+2.4%の伸びだったが、2014年には-0.9%で、リーマンショックによる景気後退時2008年(-1.0%)、2009年(-0.7%)と同規模の大幅な落ち込みとなった。仮に+1%が個人消費の定常的な伸びとすると、それと比べて2%pt個人消費が下ぶれたことになる。こうした試算から、消費増税によるGDP押し下げは1%を上回った可能性が高い。
2014年の消費増税が2%インフレ実現を「妨げた」
これらの試算を踏まえると、金融緩和強化による1年分のGDP押し上げに相当するインパクトと、同程度の景気押し下げが2014年度の消費税率引き上げで生じたことになる。
つまり、大幅な消費増税による緊縮財政政策が金融緩和による総需要刺激効果を相殺し、ちぐはぐな金融政策と財政政策のポリシーミックスとなっていた。こうした政策効果の誤算が、2%インフレが実現に至らなかった大きな要因になったと筆者は考えている。
筆者の試算や認識の妥当性についていろいろ議論はあるだろうが、岩田前副総裁のこうした見解が、今後の安倍政権の財政政策運営に影響する可能性があるだろう。なお、4月3日に、浜田宏一内閣府参与が安倍首相と面談していることも注目される。
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