みずほ銀、佐藤頭取がすべきこと 反社会的勢力との取引放置、二転三転する説明

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今回の問題は、一挙に経営レベルの問題に発展したとはいえ、元を正せば、提携ローンを担当していた個人業務部門が反社取引の発生を防げず、把握した際に直ちに処理しなかったことから始まっている。さらに、通常の場合、そうした状況がある場合には、取締役会とコンプライアンス委員会に報告されて対処が決定される。

問われる佐藤社長の手腕

今回、取締役会の開催窓口である企画部門、コンプライアンス委員会を開催するコンプライアンス部門がいち早く事情を知り得たにもかかわらず、その解消を個人業務部門に迫ったという形跡は感じられない。ある意味では、取締役会、コンプライアンス委員会への報告は、その次の問題である。

佐藤氏にまず求められるのは、そうした原点に立ち返って、傘下銀行の機能不全だった部門に対して、責任追及のメスを入れ、今後、同様の事態が発生しない態勢を築くこと。そして、それを銀行の外だけでなく内部にもきちんと説明することである。

現在、営業現場では、取引先などから批判や苦情が多く寄せられていることは誰にでもわかることだ。ところが、今回の問題が明らかなって以後、みずほでは、全国の営業店職員に対する説明が十分に行われていない。

営業現場への説明も不足

10月4日に開かれたみずほ銀行の今年度下期部店長会議において、佐藤氏、岡部俊胤副頭取が合計10分程度説明したものの、その後、今回の一件のあらましは劇的に変わってしまった。

それにもかかわらず、その後の明らかになった事態に対する説明は何ら行われていないのが実情だ。営業現場は説明手段を持ち合わせない中で、取引先からの怒りに頭を下げるだけの状態に投げ出されている。これは、銀行の本部エリートたちの怠慢以外の何物でもない。

浪川 攻 金融ジャーナリスト

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なみかわ おさむ / Osamu Namikawa

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカー勤務を経て記者となる。金融専門誌、証券業界紙を経験し、1987年、株式会社きんざいに入社。『週刊金融財政事情』編集部でデスクを務める。1996年に退社後、金融分野を中心に取材・執筆。月刊誌『Voice』の編集・記者、1998年に東洋経済新報社と記者契約を結び、2016年にフリー。著書に『金融自壊――歴史は繰り返すのか』『前川春雄『奴雁』の哲学』(東洋経済新報社)、『銀行員は生き残れるのか』(悟空出版)などがある。

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