北朝鮮が「全方位外交」に舵を切った真の理由 米国の先制攻撃リスクに屈したわけではない

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また、小此木氏は、圧力に屈して北朝鮮が対話に臨んできたとトランプ大統領が判断すれば、北に対して即時の非核化など無理難題を押し付ける可能性があると述べた。

その一方、北が圧力に屈せずに計画的に米国との交渉に臨んでいるとトランプ大統領が考えれば、適当なところで北と手を打たなければいけない可能性が出てくると述べた。

南北首脳会談の焦点

4月27日に韓国側の板門店で予定される南北首脳会談の議題について、韓国は朝鮮半島の非核化や平和定着問題、南北関係の発展を中心とし、引き続き協議していく方針を示している。

このうち、北朝鮮が目指す「朝鮮半島の非核化」は、一筋縄ではいかない。在韓米軍の戦術核兵器は南北非核化共同宣言に基づき、1992年に撤去されている。北朝鮮のいう朝鮮半島の非核化とは、アメリカによる韓国の核の傘を外せというもの。つまり、在韓米軍の撤退を示唆している。また、北朝鮮はこれまで韓国とは核ミサイル問題を原則協議せず、米国とのみ話し合うとの立場を貫いてきたために、南北首脳会談で文大統領が金委員長を相手にどこまで北の非核化問題に詰め寄れるかに注目が集まる。

いずれにせよ、南北首脳会談は、米朝首脳会談に橋渡しをする「準備会合」の役割を果たすことになりそうだ。米朝首脳会談は、トランプ大統領と金委員長の予測不可能な言動を含め、不確実な要素が多いため、南北首脳会談が事前の「実務者会議」として重要になる。

自らに天賦の才が与えられ、ディール(取引)をさせれば世界一だと考えているトランプ大統領は米朝首脳会談でどのような合意を目指すのか。私は北朝鮮の金委員長との間で、朝鮮戦争の終結宣言や平和宣言が行われる可能性が高いとみている。会議場所が韓国のソウルや板門店になれば、文大統領も交えて、3者会談となる可能性もある。北朝鮮に拘束中の米国人3人の釈放も合意されるかもしれない。

金委員長は、非核化をちらつかせているが、実際には「行動対行動」「約束対約束」の原則にこだわり、時間を稼いでパキスタンのように事実上、核保有国として将来的に容認されることを目指しているとみられる。金日成から金正日、金正恩と親子3代、半世紀にわたって核ミサイル開発に注力してきた国がいとも簡単に「核の宝剣」(金委員長の言葉)を手放すとは考えられない。

北朝鮮に融和的な文政権も永遠に続くわけではなく、4年後には再び北に厳しい保守政権が誕生するかもしれない。国内でスキャンダルまみれのトランプ政権の先行きも定かではない。いまだ30代半ばで長期独裁体制が見込まれる若き金委員長は、米国との交渉や詳細な査察検証体制づくりの間、自らを核保有国として既定事実化し、体制を保証されていくことを狙っているとみられる。

高橋 浩祐 米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

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たかはし こうすけ / Kosuke Takahashi

米外交・安全保障専門オンライン誌『ディプロマット』東京特派員。英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』前特派員。1993年3月慶応義塾大学経済学部卒、2003年12月米国コロンビア大学大学院でジャーナリズム、国際関係公共政策の修士号取得。ハフィントンポスト日本版編集長や日経CNBCコメンテーターなどを歴任。朝日新聞社、ブルームバーグ・ニューズ、 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、ロイター通信で記者や編集者を務めた経験を持つ。

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