北朝鮮が「全方位外交」に舵を切った真の理由

米国の先制攻撃リスクに屈したわけではない

トランプ大統領が3月8日に北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)・朝鮮労働党委員長の米朝首脳会談提案を即決で受諾したことが引き金となり、金委員長による電撃訪中も起きたとの見方が専門家の間では支配的になっている。

また、そもそもトランプ大統領が米朝首脳会談に応じる意向を示したことを受け、日本の安倍晋三首相も4月の日米首脳会談を急きょセットした経緯もある。

なぜ北朝鮮は対話攻勢にシフトしたのか

金委員長がここに来て、中朝首脳会談、南北首脳会談、米朝首脳会談の順で外交攻勢をかける背景には何があるのか。

慶應義塾大学の小此木政夫名誉教授は前述の国際シンポジウムで、北朝鮮が過去2年にわたってミサイル発射と核実験を行い、「軍事的な技術革新」と「軍事的な挑発」を結び付けた形で瀬戸際政策を継続してきたと指摘。そのうえで、今年に入ってからの対話路線への転換の背景には、「軍事力が持っている二面性や二義性を金正恩委員長が非常に鋭敏に理解している」ことがあると述べた。

小此木氏は、金委員長が過去に「軍事力が抑止力と外交力の2つの意味を持ち、果敢な外交を展開するためには軍事力が必要」との主旨の発言をしていたことを指摘。軍事的な技術革新と軍事的な挑発によって「抑止力の構築」と「外交力の蓄積」が図られ、現在の対話路線の外交政策に転換されたとの見方を示した。

この金委員長の考えは、奇しくも米国のジェームズ・マティス国防長官が常々言う「防衛力の強化は、外交の後ろ盾となって国際問題の外交的解決に資するためにある」との考え方に通じるものがある。

筆者は北朝鮮のこのところの外交攻勢の背景として、主に2つの理由を挙げてきた。

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