「ドラえもん」と「コナン」映画が外さない理由 親を巻き込む人気長寿アニメの絶妙な仕掛け

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それだけではない。2012~2017年の過去5年間にかけて、毎年の同じランキングで「ドラえもん」と「名探偵コナン」の劇場版映画は必ず10位内に入り、1作品当たりの興行収入は20億円以上を毎回稼ぎ出している(ちなみに同じ期間、人気テレビアニメ「ポケットモンスター」<テレビ東京系>の劇場版映画も上位の常連ながら、年によってトップ10を外すこともあったため、本稿は「ドラえもん」と「名探偵コナン」に絞って論考している)。

もちろん、「ドラえもん」「名探偵コナン」の劇場版映画は、どの作品も完成度は相対的に高いと見ていいだろうし、宣伝活動もしっかりやっているように見える。だが、それだけで安定ヒットを生み出せるほど、本来、映画ビジネスは甘くないはずだ。テレビアニメの劇場版映画だからといって、何でもかんでもつねにヒットするワケでもない。

この現象を読み解くカギは、子どもの「親」の存在にある。本来は子どもそのもの向けに展開されるコンテンツながら、親をうまく巻き込めているのが大きい。

ビジネス的な観点で見ると、無料で見られるテレビが広告、有料の映画は商品(サービス)として捉えられる。子どもがテレビという無料メディアで「ドラえもん」や「名探偵コナン」を見て、そのアニメのキャラクターや設定を知り、ファンになる。その後、映画という有料の「商品(サービス)」を「購入」するのだが、実際におカネを出すのは親だ。

親世代を巻き込む、映画ならではのヒットの仕掛け

親を巻き込む上で人気テレビアニメ、それも長寿作品というアドバンテージは大きい。「ドラえもん」は1973年から、「名探偵コナン」は1996年からテレビ放送を続けている。小学生を中心とした子どもを映画に連れて行くような親世代の多くは、幼い頃からテレビをよく見ており、もともと「ドラえもん」や「名探偵コナン」の存在を認知しているケースが多い。

「名探偵コナン」は中高生以上でも楽しめる作品でもあり、1990年代後半に中高生だった人は、現在30代半ば~40代になっている。小学生の子どもがいても、おかしくはないだろう。

一方、親が子どもからせがまれれば、何でも買い与えるかというと、もちろんそんなことはない。多くの親は、子どもが欲しい商品やサービスの中から、教育的に良さそうであり、自分が理解できるものを買いたがる。

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