経済活性化策を練るとき、日本の政策担当者は派手な新技術に飛びつくことが多い。少し前ならナノテクノロジー、最近ではAI(人工知能)や仮想通貨がそうだ。日本の政治家や官僚は、こうした刺激的な技術がそのまま巨大な成長産業になると考えている。
だがこれは幻想だ。1995年以降の米国がそうだったように、本物の経済成長とは、何の変哲もないオールドエコノミーに生産性革命が起きるタイミングで訪れるものなのである。
物流業界では変化が起きつつある
日本の物流業界では、創業8年のネット印刷ベンチャー、ラクスルなどによって、すでに変化が起きつつある。一方、宅配業界トップで100年近い歴史を持つヤマト運輸は、アマゾンや楽天などのネット通販会社によって生み出された爆発的な宅配需要に十分対応できていない。従業員は激務を強いられ、ヤマト運輸の親会社ヤマトホールディングス(HD)は昨年4月、4.7万人に未払い残業代190億円を支払うと発表した。
そうはいっても、物流業界で使われるトラックは平均して、本来の積載量の4割程度しか荷物を積んでいない。荷物が満載されていないことに加え、配送後に荷室をカラにしたまま戻ってくる車両があまりにも多いからだ。これは他国でも見られる問題ではあるが、4割という日本の平均積載率は欧州の5〜6割に比べ1〜2割低い。
このようにムダの多い物流業界へとラクスルは進出した。同社はもともとネット印刷で名を成した会社で、約5兆円の印刷市場で30万人の顧客を獲得している。だが、配送仲介サービス「ハコベル」によって同社が2015年に参入した物流市場の規模は、31兆円超だ。
物流とITのノウハウを駆使することで、3万社の零細運送会社と中小の荷主を結び付けるのがハコベルだ。物販業者がシステムにアクセスし荷物情報を入力すると、運送会社によって入札が行われる。
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