中原:そういった意味で私は、地方が少子化をできるかぎり抑え、地方創生を成し遂げるためには、地方の首長の強力なリーダーシップが欠かせないと確信しています。地方の首長が地域の住民に何としても明るい未来を見せたいという情熱を持たなければ、首長が柔軟な思考力と本質を見抜く才覚を持っていなければ、その地方の未来は極めて暗いものとなってしまうでしょう。要するに、これからの地方が何とか現状を維持していくのか、それとも坂を転げ落ちるように転落していくのか、それは首長の情熱と才覚にかかっているというわけです。
阿部:私も長野県を豊かにするためには、相当の使命感と危機感を持って取り組まなければならないと思っています。都道府県の仕事というのは法令で決められている仕事が多いのですが、知事として仕事をしていて思うのは、全国一律の制度にただ乗っかっているだけでは都道府県が自治体である必要性はないし、知事が選挙で選ばれる必要性もないということです。私が県民の皆さんに選挙で選んでいただいて知事として仕事をしているからには、長野県の個性とか強みをどのように生かして地方の活性化につなげていくかということは、いつも考えています。
地方が人口減少や少子化の問題に向き合っていくためには、やはり産業政策が大きな柱になります。長野県はモノづくり産業をさらに発展させたうえで、観光業や農業・林業といった産業をどうやって振興していくかというところで、他の自治体と差別化していきたいと考えています。さらには、子どもの教育、大人の学び、職業人材の育成といったことにしっかりと取り組んでいくという点でも、他の自治体との差別化を図っていきたいと思っています。
東京への人口集中を逆回転させる競争が必要
中原:人口が増え続けていた時代では、たとえ何も考えていない首長が何期もリーダーを務めたとしても、よほどのまれなケースでないかぎり、地方自治体が苦境に陥るようなことはありませんでした。しかし、これからの人口減少が加速していく時代では、首長の情熱や才覚がかつてないほど試される時代に入ってきたといえると思います。地方自治体のあいだで住民の奪い合いが始まり、いや応なく弱肉強食の様相が強まってくる流れが決まっているからです。首長の情熱や才覚によって、持ちこたえる地方自治体と転落する地方自治体に峻別されていくのではないでしょうかね。
「これから10年以内にはすべての都道府県で人口が減り始めるというのに、地方自治体のあいだで人口を奪い合っても意味がない」という意見があるかもしれません。しかし、そのくらいの危機意識を持って競争にならなければ、多くの地方自治体も一生懸命にはならないのですから、むしろ全体としては大いに意味があることだと思っています。将来の日本が少子化をできるだけ緩和するためには、どうしても東京や大都市圏への人口集中を逆回転させるような競争が必要であるからです。
これは決してお世辞ではありませんが、阿部知事のように先見性を持って頑張っている知事が日本に10人もいれば、私は日本の未来はそんなに暗くないのではないかと思っています。
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