52歳「ミスターSASUKE」山田勝己の甚大な鍛練

初参戦から20年超、人生を懸けて挑み続ける

「あんまりにもやせてしまって、みんなで『山田は絶対にガンやぞ』と話していた。だから、逆に『ガン、違うか?』とおまえにはよう言わんかった」と。

第3回大会で「完全制覇に最も近い男」になった(写真:TBSテレビ提供)

そこまでして臨んだ第3回大会で山田は初めてファイナルステージに足を踏み入れる。そして、15m上空に組み立てられたゴールから垂れ下がるロープを懸命に登った。しかし、無情にも残り約30cmのところで与えられた30秒を使い切ってしまう。それでも第1、2回大会を含めても誰よりもゴールに肉薄し、「完全制覇に最も近い男」となった。

「あのときは完全制覇まで行くつもりだったので、体重は軽いままにしようと朝から水分しか摂らなかったんです。それでもう深夜だったファイナルのころには空腹に加えて集中力も欠けてきていた。極端な減量がたたった部分もあるのでしょう。最後は力があまり入らなかった。でも、手応えはありましたし、あれで心に火が点いた感じです」

まだ火が灯っていなかったのかという疑念は置いておく。だが、実際に山田が「ミスターSASUKE」へと昇華していくのは、ここからなのだ。

リストラされ、アルバイトをしながら

「初めて最優秀成績者になりましたけど、もちろんそれでは満たされない。完全制覇に向けてさらに没頭していきましたね」

仕事中にトレーニングをしていて会社から注意され、一度は改めようと考えたが、どうしてもトレーニングを疎かにできない。結局、リストラされてしまった。その後、時間が確保しやすいということで妻の実家の鉄工所でアルバイトをしながら大会に挑み続けた。

「仕事を辞めさせられましたし、無茶をしていたので体のこととか、家族から心配をされたりはしましたけど、強く反対されることはなかったです。言っても無駄だと妻もわかっているので」

そう言って笑うが、第6回大会の前、体調を大きく崩したことがあった。親からも「そんなに無理して体を壊すならもうやめておけ」と通告された。

ここまでSASUKEに人生を懸けている人間はほかにいない(写真:TBSテレビ提供)

「第6回も出たんですが、その後、体調がよくなるまで半年くらいかかった。しかも医者には運動してはいけないと言われていたのですが、第7回大会はほとんどトレーニングなしでチャレンジしました。もしも、そこで体調が悪化したらさすがにアウトかなと思ったので、このときは妻と子どもを連れて行きました。いくらなんでも死んでまではやるわけにはいかないので」

ここまでSASUKEに人生を懸けている人間はほかにいない。そう断言していいだろう。仕事や健康を犠牲にしてまでやることかと首を傾げる人もいるかもしれない。だが、人がやらない、いや、できないことをやるからこそ、視聴者は山田から目が離せない。愚直ゆえに人を惹きつけ、魅了するのだろう。

番組プロデューサーも「山田さんは失敗するにしても、こちらの想像しえない結果を見せてくれる。記録よりも記憶。プロ野球で言えば、王貞治ではなく長嶋茂雄なんです」と唯一無二の存在に賛辞を惜しまない。

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