センバツ「夏とは違う甲子園」を目指した96年

なぜ高校野球の大会が春夏に年2回あるのか

向陽との試合に出た野々村氏の教え子のうち、2年生エースだった白根尚貴はソフトバンクを経てDeNAで外野手としてプレーしている。3年生で一番三塁手だった糸原健斗は、今年、阪神の正遊撃手の座をうかがっている。

事件から8年が経って、野々村氏は述懐する。

「私は、勝敗だけではなく、頑張っている高校を評価するセンバツの考え方には賛同していたのです。2003年に隠岐高校(島根県)が21世紀枠で出場した時には、手放しで喜んで監督にお祝いの電話をしたくらいです。でも、”21世紀枠”というレッテルをはられるとお互いに意識してしまう。21世紀枠の学校だって、県大会のベスト8以上なのだから極端に弱いはずはない。実力以外の要素だけで選ばれたように見られては、彼らだって気の毒だと思うのです」

熱血監督として知られた野々村氏だが、その言葉の端々からは、人を思いやる包容力のある人柄がにじみ出ていた。

現在野々村氏は教育評論家兼画家として活動をしている(写真:野々村直通氏提供)

「21世紀枠」は、「夏の甲子園との差別化」のために設けられた。2010年からは「春」の後援に朝日新聞社が、「夏」の後援に毎日新聞社がつくことになり、春夏両大会は朝日、毎日の共催に近い形になっているが、それでも年2回全国大会をするには独自性が必要と考えているのだろう。

「21世紀枠」の考え方は、「勝敗以外の要素も考慮する」という、「春の甲子園」のもともとの考え方と同じである。「屋上屋を重ねる」感があるのは否めない。なまじ「21世紀枠」というネーミングがあるために、異質な基準で選ばれた高校が半人前のように出場しているような捉えられ方をされ、無用なわだかまりを生んでいる。こうした選考の仕方こそ、「春の甲子園の妙味だ」という意見もあるにはあるが、なんでもオープンになる今の時代にそぐわなくなっているという見方もできる。

新たなコンセプトを打ち出してはどうだろうか

このほかに、1998年にはセンバツは「応援団賞」も創設している。あくまで独自色を出そうとしているが、春と秋に甲子園で全国大会をすることの必然性を明確にしたいのであれば、新たなコンセプトで全く違う大会にしてはどうか。

例えばトーナメント戦ではなく、リーグ戦での開催、公立高校だけの大会の併設、2校以上の高校による「連合チーム」の大会を併設も考えられる。

「勝利至上主義」「エリート主義」とは一線を画した大会、未来へ向けた思い切った改革に舵を切ってはどうだろうか? そうした取り組みこそが「21世紀の甲子園」へのプレゼンテーションになると筆者は考えている。

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