28歳「発達障害」の彼が3度仕事辞めて移る先 家業を継ぐが「影響力を持つ人間になりたい」

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そして今年の1月末に退職して、今は無職の期間です。4月から地元に戻って家業の手伝いをする予定なので、それまでは趣味の旅行をして過ごしているところです。来週はロンドンとパリへ行く予定です」(加藤さん)

発達障害であることは個性

今年の1月にうつで病院を受診した際、改めてADHDと診断された加藤さん。ADHDの薬であるストラテラを処方されたが、効果を感じられなかったのと高かったので服用をやめてしまった。しかし、自立支援制度を受ければ1割負担で済むので、現在手続きの最中だという。障害者手帳を取る予定はない。

「手帳を取るメリットを感じません。障害者雇用で働くとなると、収入も少なくて生活が厳しくなります。自分らしい生き方をしたいなら別に障害者である必要はありません。

僕は、発達障害であることは個性だと思っています。アメリカでは発達障害の個性をうまく教育化していて、例えばプログラミングが得意な人はとことんプログラミングを極めています。日本でも、そうやって本人の特性に合った教育をもう少しできればいいのにと思います。そうなれば、障害とは呼べなくなり、個性として認められると思います」(加藤さん)

サラリーマンが向いていなかったと語る加藤さん。4月から手伝う予定の家業とは父親が経営する防災設備の会社だという。従業員は現在2人だけ。父親がそろそろ引退する年齢なので継がなければならない。ただ、加藤さんは継ぎたくないと思っている。

「家業はやりたい仕事ではないですし、興味も持てない分野です。だけど僕は、ほとんどの分野をこなせる気がしません。唯一できることと言えば、文章を書いたりブログで収入を得たりすること。今も、クラウドソーシングでライティングの仕事をたまに請け負い、小銭は稼いでいますが、それで食べていくのはなかなか厳しい状態です。

でも、僕は影響力を持つ人間になりたいんです。中学生の頃くらいから、雇われるのは向いていないから起業したいとは思っていました。思っていただけですけど……。また、小さい頃からカリスマのような人に憧れています。例えばホリエモンみたいな。

自分で言うのも何ですが、交流会などに行くと『人を惹き付けるパワーがあるね』とよく言われます。だから、発達障害当事者として文化人枠で活躍できるようになりたいです。地理に詳しいので、クイズ番組に出られるようになれたらいいですね」(加藤さん)

そう夢を語るが、それも刺激の少ない田舎の実家に帰ると遠のいてしまいそうだ。正直なところ、加藤さんは自分を客観視できていない部分もあるのではないかと感じた。4月から加藤さんの環境はガラリと変わる。彼が発達障害当事者のカリスマと呼ばれる日は来るのだろうか。

【2019年3月19日14時00分追記】関係者のプライバシーに配慮し、本文の表現や写真を一部差し替えました。

姫野 桂 フリーライター

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ひめの けい / Kei Himeno

1987年生まれ。宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをしつつヴィジュアル系バンドの追っかけに明け暮れる。現在は週刊誌やWebなどで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好きすぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。趣味はサウナ。

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