スマホ用「ライトのかさ」が作られた深い理由 ネパール無電化地帯に明かりを灯す取り組み

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Nature and Creation代表の赤池静氏が巻いているカシミヤストールが50万円のリターンとして提供される(編集部撮影)

なお、リターン品としてはジュエリーのほかにも、現地の女性が手作業で製作した自然素材のカシミヤストールも用意。こちらは現地の女性の雇用や伝統的な産業の持続を支援する、Nature and Creationからの提供だ。

同社は奈良県に拠点を置き、百貨店やギャラリーでネパールの自然素材・手作り品の直販を行うブランド。リターンとして提供するストールはヒヤラヤの高地に放牧されるヤギからとれる希少な素材を用いたもの。現在は産業としては衰退してしまっているため、入手できなくなっているそうだ。

「菊池さんの展開するアースミルクプロジェクトには、自然との共存、地域に根ざした産業による循環を目指す点で共感しています。現地の女性がつくったストールを身に着けてもらうことにより、会話からネパールのことを知ってほしい」(Nature and Creation代表の赤池静氏)

支援やビジネスの新たな形

また、今回採用するクラウドファンディングサービスは、2011年にサービスを開始したレディフォー。本プロジェクトの担当であるレディフォークラウドファンディング事業部の廣安ゆきみ氏は、自社について次のように説明した。

「数百のクラウドファンディングがあるなかで最も老舗で支援額などが国内最大のサービスです。プロジェクトにつき担当者が1人つき、プロジェクトメンバーとして一緒に考えるのが特徴です。プロジェクトの成立率が20~30%というプラットフォームも多くあるなか、当社は平均75%となっています」(廣安氏)

クラウドファンディングの資金調達方法には「All or Noting」と「All in」の2種類があるが、同社では前者を採用。目標の資金額に達しなくても、集まった額だけがもらえる後者に対し、前者では目標額が集まらない場合、そのプロジェクトは成立せず、資金も受け取れない仕組みだ。「プロジェクトオーナーがやり抜こうとする気持ち、資金提供者が応援する気持ち」などが高まり、プロジェクトの成立に結び付きやすいとされている。

なお、支援額は目標額をすでに突破し397万9000円、支援者は64人(3月23日現在)。次なる目標額759万円に向けては約350万円の差額があるが、期限まで35日の日数が残されている。

日本では震災を経験するなかで、SNSという新しい形の人のつながりや、コミュニケーションが生まれた。また一方でクラウドファンディングという、ネットを使った新しい資金調達の枠組みも急成長してきた。

そうしたなかで今回、発電機とジュエリーと繊維産業という異なるビジネスが、「地域や環境に負荷をかけないエネルギー利用による、地域の発展」を目標に、不思議な形で結びついた。今回のプロジェクトがどのような決着を迎えるかは別として、支援やビジネスの新たな形として、目覚ましいプロジェクトだと言えるのではないだろうか。

圓岡 志麻 フリーライター

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まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

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